水素H2エネルギー⑦天然に水素が存在する
なんと天然の水素も存在します。最も軽い気体ですから、地上に出てきたとしても、あっという間に宇宙空間に逃げ去ってしまうのではないかと思っていました。天然水素の貯留、回収についての記事を見つけましたので紹介します。天然水素の動向 2023/08/31 JOGMEC 小杉安由美こちらの記事から改変・転載①天然水素は多くの地域で確認されている天然水素は、トルコ、オマーン、スペイン、日本(長野県白馬八方温泉)等の世界各地、陸上のみでなく海底(中央海嶺付近の熱水鉱床)においても観測されています。しかし、メタンやヘリウムと混合していることが多く、高純度の水素ガスは珍しいそうです。次の地図は天然水素の分布です。意外に確認されているのですね。②年間水素生産量は天然ガスに比べて少ないけど…全球規模での年間の水素生成量を試算した研究例があります。(下表)。研究によって、対象とする生成場やプロセス、計算方法は異なっており、その結果は数万~数千万ton/yearと幅があります。最も楽観的に見積もられているZgonnik (2020) [6] においては、22,680千ton/yearと見積もられています。これは体積に換算すると254 ±91 Bm3/ year (8.97 ± 3.21 Tcf) であり、天然ガスの世界生産量(2019年)の4.1 Tm3 (145Tcf) と比較すると2桁も小さい数字です。しかし、有機物を原料として、続成作用によって生成するまでに非常に長い時間のかかる化石燃料に対して、天然水素は比較的早い反応速度で長期にわたり連続的に生成し続けていることを考慮すると、大量に存在している可能性はあると考えられるそうです。③水素はどのように生成したか(3つのメカニズム)1)水の放射性分解である。岩石中に含まれる微量のウラン、トリウム、カリウム等の放射性元素の壊変により発生する放射線によって水が分解され水素が発生します。2)蛇紋岩化反応:かんらん岩等が変質して蛇紋岩となる際に、水素が発生します。3)水素を大量に含む地球深部のコアや下部マントルから排出された水素が、プレート境界や断層に沿って浅部まで上昇したものです。④利用できそう?③のように生成した水素は天然ガスを貯留する岩盤にたまり、天然ガスと同じように回収できそうです。マリのBourakebougouの例があるマリの首都Bamakoの北部50キロメートルに位置する鉱区(Block25)は、1987年に水井戸掘削の際に水素が発見されたBourakebougouを含む面積43,000平方キロメートルの広大な鉱区です。2017年から2018年にかけて24本(計6,953メートル、深度100~1,800メートル)の試錐を実施しており、2022年5月より新たな試錐も実施しています。2011年にHydroma社がリエントリーし、生産した水素を直接燃焼して発電し、近隣の村に提供するパイロットプロジェクトを2012年から開始し、現在まで電気の供給を続けています。天然水素の利用は始まったばかりですが、天然ガスにくらべて、埋蔵量は少ないものの何億年もかからず生成するので、意外に利用が進むかもしれない。