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2006/01/29(日)02:48

イルカやクジラの漂着(ストランディング)と日本の獣医学者

ニュース(118)

テムズ川のクジラは力尽きて亡くなった。 今日もニュースでマッコウクジラの漂着が報道されていた。 イルカやクジラの漂着や川や湾岸への迷い込みはストランディングといわれている。 ちなみにイルカとクジラは生物学的には同種。 ワシとタカの関係のようなもので、大きさや形で学者が勝手に名前をつけ分けているだけだ。 ストランディング(Stranding)という言葉には馴染みがない人も多いだろう 「(船などが)座礁すること」「(海洋生物が)岸や浅瀬に乗り上げること」という意味。 実はこれは非常にありふれた出来事で、少なくとも日本各地で年間数百件の発生しているそうだ。 最古の歴史書・古事記にもイルカの大量ストランディングで沖が血に染まったという記載がある。 メディアではストランディングについて報道するものの、なぜクジラやイルカがそのような自殺的行動をしてしまうのか? ストランディングという名称はもとより、原因についてはほとんど触れられないのでちょっと解説。 1.寄生虫・・・方向感覚をつかさどる耳の器官を寄生虫が狂わせる。 2.感染性脳炎・・・ウイルス感染により脳炎が起こり異常行動を引き起こす。 3.超音波障害・・・クジラやイルカは超音波で方向や距離感を把握する。海底の形が複雑な場所などでは超音波を正確に捉えにくくなる。特定の場所でストランディングが頻繁におこるのはこのため。 実はこのストランディングが科学的に研究され、原因が明らかになってきたのはほんのここ10年ほどである。 そして、ストランディング研究には日本の獣医学者たちが大きく貢献している。 十数年前、日本のクジラ食文化を非難する過激な欧米の動物愛護団体や環境保護団体、特にグリーンピースが日本で起こったストランディングを、あたかも人為的な漁であるかのように報じたことがあった。 日本を取り巻く海底はきわめて複雑でストンランディングが頻繁に起こりやすく、海外のメディアは日本各地で起こるストランディングを「日本のクジラ漁、イルカ漁」として連日報道した。 このため、幼稚で感情的な国際的非難が集まり、国際捕鯨委員会(IWC)と商業捕鯨モラトリアムの問題と無理やり関連付けられ、国際的問題に発達しかけた。 日本文化が「野蛮」と決め付けられそうになっていた。 このピンチに日本の獣医学者たちが立ち上がった。 日本で打ち上げられたイルカ、クジラを徹底的に調査し、寄生虫やウイルス感染を次々と証明し、国際的な学会や生物学誌で発表。 数年にわたり、次々と発表される日本の高レベルな論文。 ストランディング現象を解明し、獣医学、海洋生物学の進化を促した。 海外の冷静で高名な獣医学者や海洋生物学者はこれらを正等に評価。 感情的批判に走るグリーンピースをはじめとするエコファシズムはついに沈黙せざるをえなくなった。 驚くべきことは、これらの調査研究を行った獣医学者には、海洋生物を専門とする学者はほとんどいなかったことだ。 日本のピンチを救った獣医学者たちは、牛や豚、犬など他の動物を専門とする人たちであった。 ある高名な国立大学の獣医学科教授が陸で大量死したイルカたちの耳から寄生虫を発見した。 しかし、この教授はもともと"牛"の"先天性奇形"の専門家であった。 もちろんイルカの寄生虫や病気になどついてほとんど知らなかった。 「論文を書かなければ・・・、しかもレベルの高い論文を。」 連日の海外の歪んだ報道に憤り、憂いていた老教授には、恥も外聞も投げ捨てる覚悟があった。 頭を下げ、自分より年齢も若く、経歴も少ないが、専門性の高い学者達に教えを請うことにした。 意外なことに協力を惜しむ学者はほとんどいなかった。 それどころか、ほとんど全面的な協力を得ることができた。 ドイツ語など専門家でも読みにくい論文を和訳して送ってきた若い大学講師もいた。 協力などしても自分のキャリアにはほとんど上積みされないのに・・・。 かくして、一つのきわめてレベルの高い研究がなされた。 この研究は珍しい症例として海外でも高い評価を受けることとなった。 このようなレベルの高い日本の研究に海外の学者は刺激され、ここ10年でストランディングの研究は飛躍的に進んだのだ。 専門外の分野についてあれほど高度な研究調査を行った日本の獣医学者たちは、解剖学、微生物学、病理学など分野の垣根を越え、閉鎖的な大学の門を破り、お互いに協力し合ったのだった。 個人的には捕鯨について反対も賛成もしない。 ただ、他国の文化を自分たちの価値観で一方的に非難する人々を支持しない。 そして、そのような卑劣な非難に正面から立ち向かい、堂々と勝利した日本の獣医学者たちを誇りに思う。 閉鎖的な構造、独善的な行動が目立ち、政治力の獲得にばかり注力するあまり、若い医師達から見放されつつある日本の医学会も見習ってほしい事例である。

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