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カテゴリ:倫敦事情
当地の小学校から、日本の踊りのまねごとのワークショップを授業でやってもらえないかとの依頼がありました。小学校といっても、イギリスは、治自体によっては4歳から入学するので、低学年なら、幼稚園のおゆぎみたいなものです。たった30分そこらで"日本舞踊"ができるはずもなし、盆踊りのようなものを、みんなで楽しく踊るってことになりそうです。要するに、日本の音楽を聞いて、それに合わせて身体を動かすってことに意義があるわけで。
で、まあ、いずれにしろ、面白そうなので、お引き受けし、踊りのお友達と一緒に行くことにいたしました。内容については、師匠にも相談に乗っていただきます。 ただ、一つだけ問題は、校長先生から、「できるなら、Public Lialibity Insurance (訳すとすれば、公的責務保険か...?) に加入しておいて欲しい」とのこと。ああ、やっぱりなあ...と思いつつも、面倒くさい、というか、出費だなあ、というか...。 アメリカほどではないにしても、少しずつですが、何でもすぐ裁判ざたになる世の中に、なってきています。公の場での行事で、事故などで怪我をした場合の免責を負わされる場合の保険。それと、昨今もっと大事なのは、ハラスメントなどで、あらぬことを言われて訴えられた場合の保険。子供相手の場合、触っただけで何を言われるかわからないってことが、あるそうです。 そりゃあ、変な事件、酷い事件があったりして、人の親としては、注意しすぎるにこしたことはないのでしょう。でも、子供を守るための過剰反応が、かえって、子供を危険にさらしていると指摘する人もいます。 先日もテレビで、ある学校の教頭先生が話していました。校内で子供が怪我をした場合、自分はその子に触らない。保健室に行く必要がある場合は、自分ではなく、他の子に連れていかせる。ばんそうこうを貼っておく程度の傷も、他の子に貼らせる。もっと重傷の場合も、自分ではタッチすることができない。医療従事者が来るのを待つだけだと。 低所得者層の地域で、放課後、10代の男の子達を集めてスポーツなどをさせるチャリティーを主催している人も、以前は、ボランティアの指導員が数名いたけれど、今は、自分一人で頑張るしかないと。ボランティア達が、あらぬことを言われて訴えられたりしては大変だし、また、先に挙げた保険をかけるお金もない。そこに来る子供達は、ほとんどが、貧しい母子家庭の子達だそうで、難しい年頃の少年達に、父親的存在になってあげたいけど、ハグなんてできない。なるべく手にも触らずにスポーツ指導をするしかない。 昔は、地域全体で子供を見守っていた。大人は、よその子の面倒もみていた。でも、今は、それをしたくても、できなくなってしまった。と、ある女性牧師さんが指摘していました。 学校で、ピアノを指導している先生も、「子供と二人だけでは、絶対部屋にいないこと。」「肩の力をぬかせるために、肩に触る時も、まず、説明をしてから触れること。」など、いくつもの指針ガイドラインに沿って指導するそうです。 私達も、学校訪問の際は、もちろん、教室に他の先生にいていただきますが、それでも、昨今は、どの学校も、外部から指導に来る人には、保険に入っておいてもらうことにするそうです。例えば、近所のおじいさん、おばあさんに、教室に来て昔話をしてもらう、なんてことも、気軽にはできなくなっていますね。 また、演劇や音楽の発表などの学校行事で、父兄が写真やビデオ撮りをすることを禁じている学校も増えています。それらのフィルムが、変な大人の手に渡っては大変だから、というのです。そりゃあ、そんな人達の手に渡ったら絶対に嫌ですよ。でも、子供の晴れ姿の記録を残せないとうのも、親御さんとしては、残念でしょうね。 子供にとっては、怖い変な事件が起こっている。それが、普通の大人にとっても、うっかり、人様の子供の頭をなでたりできない、場合によっては、微笑みかけたりもできない怖い世の中になっている。とにかく、もちろん、一番悪いのは、自分よりも弱者の子供を酷い目にあわせる、少数の悪~い大人なんですよね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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