今日は寒いから部屋でゆっくり音楽を聴こう
最近はきれいな声の女性の歌ばかり聴いている。黒人のソウルフルな歌声もいいのだが、ときには白人シンガー特有の澄みきった声が聴きたくなる。煎れたてのコーヒーの香を愉しみ、バターとミルクたっぷりのクッキーを囓り、そしてお気に入りの女性歌手の声があれば、冬の夜は耐えられる(笑)。(おれはオバサンか?^^;)まずは「What a Wonderful World」Celine Dionである。この歌はサッチモことLouis Armstrongが66歳のときに吹き込んだオリジナルで、日本ではホンダのCMで使われてから若い人にも知られるようになった。この歌を理解する上で、70歳のサッチモを祝って再収録された際に、その場に集まったミュージシャン(私はアーティストという大げさな言葉は使わないんだよw)たちにサッチモが言った言葉を知っておくほうがいいだろう。詳しくはぜひ以下のサイトをご覧いただきたい。http://www.mmjp.or.jp/sannomiya/wonder.htmlさて、Celine Dionだ。なんとまあ懐かしくも優しい歌声であろうことか。癒されるというのはこういう歌を聴いたときに使う言葉だろう。私の敬愛するハードボイルド作家の一人、マイクル・コナリーが『暗く聖なる夜』という作品で、この私の気持ちを代弁してくれている。ちなみにこの作品は文庫翻訳ミステリー、IN☆POCKET 2005年総合ランキング第1位に輝いている。(原題は「Lost Light」だが、訳者は「What a Wonderful World」の歌詞からこのタイトルを引用した。こういうワカッテイル人に翻訳されて、コナリーも幸せである。)みなさん、書店で立ち読みも面倒でしょうから、ちょっと長くなるがしっかり引用してしまおう。(全身不随のロス市警の元刑事ロートン・クロス(黒人)が、悪辣なFBI捜査官2名に自宅でいたぶられ、辱められた後、落ち込んでいる夫を見て、妻のダニー(ダニエル)がとった行動のシーンである)***** ダニーは部屋を横切って、夫のもとにいった。ひとことも言わずに、彼女は車椅子の上にのぼった。夫の痩せたふとももをひざではさむ。夫のひざの上に腰をおろし、バスローブの前をはだけ、夫の顔をみずからの乳房に引き寄せた。ダニーは夫をそのまま抱いていた。クロスはまた泣きだした。なんの言葉も交わされなかった。彼女は静かに、優しく夫を泣きやませた。すると、彼女は夫に歌いかけはじめた。 その歌はわたしの知っている歌であり、彼女はそれを巧みに歌った。その声はそよ風のように柔らかかった。その歌の元々の歌い手はこの世の苦悩のすべてを、そのかすれ声に乗せて歌っていたのだが。だれもルイ・アームストロングの足下にも寄れないと思っていた。しかし、ダニー・クロスはまちがいなくそばに迫っていた。 青い空が見える 白い雲も見える 明るく、清らかな昼 暗く、聖なる夜 そしてわたしは、ひとりでこう思うのだ なんと素晴らしい世界だろう、と I see skies of blue and clouds of white On the bright sunny day, or in the dark sacred night And I think to myself "What a wonderful world !"※『暗く聖なる夜』マイクル・コナリー(古沢嘉通・訳)、講談社文庫。下巻・P.34~35より。*****そしてセリーヌ・ディオンもまた、まちがいなくサッチモのそばに迫っている、とわたしは思うのである。白人ではないが、Lena Parkの「You Raise Me Up」もいい。日本語版では「祈り」というタイトルで有名である。英語版、日本語版どっちもいいが、日本語版ではだいぶ内容が違ってしまう。英語版をじっと聴いていると、あの「you raise me up」の部分で、とても元気を貰える。さて、極めつきは、「Over the Rainbow」Eva Cassidyである。バックはギター1本。囁くように歌うのだが、歌唱力に裏打ちされたその声は、魂をそのまま引き込まれるような魅力がある。なんという澄み切った歌声なのであろう。感動の涙が自然にわいてくる。そう、そしてこのEva Cassidyは「What a Wonderful World」も歌っているのだ。ライブで歌っているせいか、声に力が入っている。やはり、これもいい^^明日も寒そうだから、私はまた彼女たちの歌声を聴くだろう。