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2022.03.24
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 話しかけても良いものかと先程から様子を伺っていたらしい。おずおずと草むらから出てくると軽い会釈をする。

「先程は失礼致しました。突然の事で説明する暇がなかったものですから。」

 にこっと笑顔で返してはいるが前に組んだ手は微かに震えていた。

 特徴的な朱く長い髪は大きなリボンを使い、後ろで束ねている。それに大昔の人が着ていた椛柄の袴姿だ。少なくともこの辺りでは決して見られない格好をしている。

 じろじろと物珍しそうな目で見られている事に気付き、少女は少しむっとした顔をする。

「あんまりじろじろ見ないでくださいよぉ。命を救ってあげたんですからね、坊や。」

 ー大恩人なのです!えっへんと1人威張るその様子に軽いイラ立ちを覚え、露骨に視線を崩壊した家へと戻す。

命の恩人?

 それどころか父さんと母さんを連れて行った奴らを見失ってしまった。せめて何か痕跡が残っていればいいけれど…。

 ふらふらと力の抜けた足で行こうとすると後ろから自称大恩人が呼びかけてきた。

「後を追ってはダメです。捕まっちゃいますよぉー。」

 正直うるさいし余計なお世話……だっ。

 案の定、瓦礫に躓き派手に転んでしまった。右足が酷く痛い。

 割れた窓ガラスの破片でもあったのか、よく見ると鋭利な物で思い切り切られた様な跡から血が流れ出していた。この深さから言ってしばらく止まりそうにない。

「もう坊やは人の言う事を聞かないんですからぁ〜。」

やれやれとため息をつきながら近付いてくると屈み込んで手を翳す。

「珱花絢爛!(おうかけんらん)」

 色とりどりの花が手から次々に現れ、鎖の様に繋がり怪我をした足へと纏わりつく。瞬く間に花まみれになり、自分の足がもはやどこにあるのかわからなくなった瞬間、全ての花が一斉に燃え上がった。

「うわぁーっ!!」

 とっさに赤々と燃え盛る炎を消そうと手で払い除ける。が、そんな事をしなくても炎は急激に勢いを失い消えた。燃えるのも突然だったが、消えるのも唐突だった。

「なにするんだ!いきなり人の足を燃やすなんて!!」

立ち上がって抗議するボクを見て一瞬驚いた様だったが、すぐにくすくすと笑いだす。何が可笑しいのかさっぱり理解できない。

「だから…!」
「足は治った様ですね。」
「だから、人の足を…。えっ?」

 恐る恐る燃やされた足を見ると血だらけだった足は綺麗に完治していた。

「まさか…治ってる。一体、これは…。」
「驚きました?でも、少しは私の言う事も聞いてくださいね。」

 唖然と立ち尽くすボクとは対照的に何かを期待するかの様にキラキラとした視線を向けてくる。その目には一点の曇りもない。

「それに折角呼ばれたんですから、坊やに。」





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最終更新日  2022.03.25 19:15:12
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