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「エビデンス」という言葉をご存知でしょうか? 我々は日常診療に際し当たり前のようにこの言葉を使っているのですが、実のところ僕にはこの言葉の意味がよくわかりません。研究社の新英和中辞典 第6版によるとエビデンス(evidence)とは『立証するための)証拠(物件), 物証; 証言 〔of,for〕』とあります。最近はEBM(Evidence Based Medicine)なる用語もよく使われ、エビデンスに基づいた治療が求められています。
ウチの病院でもエビデンスマニア(笑)の先生が「どくちる君、この疾患について大規模なランダマイズドコントロールスタディー(Randomized Controlled Study)があるんだけど知ってる? 今どきこのRCTを知らないと医師失格だよ」なんてよく言われます。その場は適当に「はぁ」などと答えておき、その後は文献検索とにらめっこです。これが疲れます(笑) さて、エビデンスには3つの場面が想定され「つくる」「伝える」「使う」の3つが挙げられています。つくる場面はエビデンスを作るための研究などを指し、伝える場面は情報の効率化や質の向上のプロセスを指します。そしてそのエビデンスを適用し適用される場面が「使う」場面となります。エビデンスであるからには「バイアスが少なく」「ばらつきも少なく」「遅れも少ない」ことが必要です。ケースレポート(症例報告)のような後ろ向きで質の低い研究からRCTのような質の高い信頼に足る前向き研究までいろいろなエビデンスがあるのですが、もっぱら言われているのはRCTではないでしょうか。 ・・と、難しい話はここまでにして(これ以上はよく知らないので書けないのです) 実際に患者さんを前にしてみましょう。「今」救わねば命が危ない患者さんもいるにはいるのですが、一般外来は緊急性の低い患者さんが大半です。高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病関連の疾患が当てはまります。そういった患者さんを前に我々は治療を行っていくわけですが、はたと困るのが薬などを処方すべきかどうか、という事です。例えばウチの病院ではコレステロール値の正常上限を220mg/dlとしています。(この場合の「正常」とは何であるかはさておき)健康診断などで総コレステロール値が250mg/dlであった患者さんがやってきたとします。一般的には食事療法や運動療法に加え薬物投与の対象となるわけですが、患者さん自体は痛くもかゆくもないわけですから「先生、この薬を飲まないといけないんでしょうか?」と尋ねられる方もたくさんおられます。そんなときに「海外でのRCTによれば云々・・・」と話をしてもよく伝わりませんよね。結局はコレステロール値を正常範囲に維持できれば血管系イベントの発症が有意に抑えられる、という訳なのですが、じゃぁ薬を飲めば心血管系イベントは起きないか、といわれると困ってしまいます。薬を飲んでいてコレステロール値が正常でも心筋梗塞や脳梗塞になる方はたくさんいますし、飲んでなくても病気にならない人もたくさんいるからです。結局は「確率」論に収束するわけなのですが、患者さんに病気の確率理論を話していても始まりません。 薬を飲んでいるのに発症してしまった場合、なんと言い訳すればいいのでしょうか。「残念でした。ハズレです。」とは言えませんしね(笑) 毒になるかもしれない、あるいは役に立たないかもしれない薬を処方する以上はきちんと最後まで責任を持って患者さんと向き合わねばなりません。結構難しい問題だなぁ、と思います。病気を予測する事は実に難しいものです。目先の数字ばかりにとらわれず、もっと大きく広い視野を持って患者さんと付き合っていきたいなぁ、と思いつつ今日も外来をこなしています・・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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