ありがとう、ということ
ちょっと前、上野の東京国立博物館で、縄文・弥生時代の歴史史料をみる機会があった。何千年も前につくられた埴輪の前で、なんとも不思議な気分になった。簡単に壊れてしまいそうなものばかりである。それが、何千年もの間を生き延びて、今、私の目の前にあるという事実。ここまで残っていてくれて、ありがとう、と思った。埴輪の前で笑いながらありがとうと言っている図は、今思うとすっごく変だし、埴輪をつくった人は、何千年先の私のことなんか知ったこっちゃないだろうけど、ほんとに、自然にそう思ったのだ。ありがとうという言葉の正しい使い方を、知ったような気がした。本当なら、ないはずのものが、そこにある、ということに、自然に、頭が下がること。