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テーマ:山登りは楽しい(12071)
カテゴリ:山
ひょんなことから、久しぶりに大台ヶ原を歩く機会に恵まれた。大台ヶ原は日本で一・二を争う多雨で知られる。降水量は年間5000mmに近く、俗に「一週間に8日降る」と言われるほどの所だ。そこからの連想は当然ながら、苔むす深い森の情景だろう。だが、実態はその想像からはかけ離れている。 大台を歩き始めてすぐ目につく情景。トウヒとウラジロモミが主体の美しい森なのだが、ほとんどすべての木にビニールテープで鉢巻きがしてある。 近づいてみたのがこれだ。テープの鉢巻きの木の根本から高さ2mほどの位置まで金網がかぶせてあるのだった。鹿の食害を防ぐためだ。さらに、周辺には鹿よけの鉄製の柵が幾重にも縦横に巡らせてある。なんつうか、人間が檻の中に入れられてウロウロしている感じだ。(^_^;) これは何の写真かわかるだろうか。このあたりに生えている木は例外なく揃って一定の高さまでは枝がない。要するに鹿が首を伸ばして口が届くところまでは、きっちり食い尽くされて残っていないわけだ。これを「ブラウジングライン」という。下に生えているのはミヤコザサで、これも鹿に食われ、まるで芝刈り機を使ったかのように短く刈り込まれている。あたかも良く手入れされた英国庭園のような雰囲気だ。
極限まで荒廃した牛石ヶ原。元は苔むす深い森だったのだが、まず伊勢湾台風で多くの大木が倒れ、その倒木を人間がカネにしようと運び出した結果、露出した表土が乾燥。そこに笹が進出し、それをエサとする鹿を呼び込んで最終的にこうなった。自然災害+人為の誤り=この情景…ということになる。ここまで荒廃し尽くすと(まるで火口原のようだ)、それはそれで「一幅の絵」になるものではあるのだが… 鹿が異常に増えた原因は、ニホンオオカミという天敵を絶滅させたことにより、個体数を調節する生態系の機能が失われたこと、そして温暖化で冬期の斃死数が激減したことが大きい。一度狂った自然のサイクルを正常に戻すのは、人間の力では非常に困難であることを、大台ヶ原の現状は教えている。地球規模でその誤りを繰り返してはならないと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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