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環境・平和・山・世相 コジローのあれこれ風信帖

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2011年08月16日
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テーマ:ニュース(99430)
カテゴリ:人間

 またも長のご無沙汰。いったん書きそびれると、いたずらに時間ばかり経過してなかなか再開のきっかけがつかめない。論説記者時代からの習性なのだと思うが、起承転結一貫した論旨の文章を書かなければという意識が邪魔になっている。結論はなくてもいいから、もっと時々に感じたことを端的に書く方が長続きするに違いないとは思うのだけれど… ともあれ今夜は送り火。3.11の犠牲者が増えただけ、冥土への帰路は賑やかなことだろう。

 その送り火を巡って、京都五山で周知の悶着があった。瀬戸内寂聴さんは涙ながらに憤りを表明しておられたが、コジローの思いは寂聴さんに貴重音で共感しつつも複雑だ。大文字を初めとする京都五山の送り火は、束の間、現世に戻って思いを遺す近親者や子孫と交歓した祖霊が、冥土に戻る道を照らすために焚かれる。今年の送り火で、最も痛切な思いを持って送り出されるのは、疑いなく3・11被災者の無念に満ちた二万数千の霊魂の群像であったろう。だから、被災地陸前高田産の材を使った経木を使用するのは時宜にかなった着想だったと思う。だが、その材に含まれる放射性物質を巡る不安が交錯し、二転三転したあげく、現に確認されたセシウム汚染の前に、その着想は最終的に放棄された。

 これについて、部落差別と同じ構造ではないかと指弾する人がいる。かつて部落民は現世で差別されただけでなく、葬送も一般の社寺で営むことを許されず、来世にわたって差別は継続した。放射能差別はその再現だというのだ。ご自身聖職者である瀬戸内寂聴さんの憤りも恐らく同一の系譜のうちにある。いま最も悼むべき霊魂を無条件に悼むことができない社会とは、そこに潜む差別の意識や構造、人々の絆とはいったい何であるのか。

 たしかに、嘆息せざるを得ない状況であることはたしかだ。だが、コジローには、右往左往した京都五山や、最初に送り火における放射能リスクへの懸念を表明した誰かを批判する資格があるとは思わない。正直に言うが、この放射能のリスクに対して、どのように対応すべきなのか、社会レベルでも個人レベルでも、それを判断する座標軸をいまだ獲得できていないからだ。

 かつての部落差別には明確な政治的経済的意義があり、そしてそれゆえにそれは構造的に変容しうるものだった。だが、いったん野に放たれた放射性物質はどのようにしても分解せず、そこに止まり続ける間、生命体に有害な放射線を出し続ける。それは人為ではどうにもならない物理現象であって、それを嫌悪し拒否するのは正常な生命反応というべきだ。少なくとも社会的制度的な現象である部落差別と同一線上で論じられるものではないだろう。つまり、五山の送り火に放射性セシウムが含まれる経木が焚かれることを恐れる人は決して差別者ではない。

 昨日のNHK・TVで作家の五木寛之さんが「放射能時代」という言葉を使っていた。後世の人々が現代を振り返ったとき、「戦国時代」や「室町時代」と同じように、原爆が投下された1945年から以後、3.11を含む一時代を「放射能時代」と呼ぶだろうと。

 それは、本質的に生命と共存できない放射能との共棲を強要される時代だ。悲しいことだが、我々が暮らす国土は、もう取り返しがつかない程度まで放射能で汚染されてしまった。福島第一原発の今後の動静によりその程度は異なるが、放射能はこれからさらに拡散し我々、そして我々の子孫たちの身近に常住するようになる。環境から、食べ物から、そして大気や水から、ある程度の体外体内被曝は避けられない。そうした状況下にあるべき行動規範、モラル、ヒューマニズム、それはかつて放射能に汚染されていなかった世界で我々が馴染んできた理念や感性で裁断したり援用したりはできないものに違いない。だが、我々はまだ、放射能時代の倫理学とも呼ぶべきものを何ひとつ得てはいないのだ。京都五山の送り火を巡る騒動を見ながら、そのことに今はただ、深く困惑している。 

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最終更新日  2011年08月16日 22時53分56秒
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