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カテゴリ:本日のスイーツ!
やがて、ロブが言ったように、マフィアの内部抗争は、だんだん激しくなっていった。
しかしまあ、オレにとっては、それからの日々というものは、「平和」そのものだった。 と言うか、「平和」というのがどういうものなのか、オレはそこで初めて知ったと言ってもいい。 それは、ごく他愛ないものだ。 オレが住み着いて、半年くらいが経っていたある日のこと。 「おーい、なあシャノ、買いだし行こうぜっ買いだし」 扉の開く音がしたかと思うと、ロブの嬉しそうな声が飛んできた。 確か奴は今朝、画廊に行って来る、と出かけていた。 ということは、売れたのか。それは良かった。 しかしその時のオレは、今まさに、床にブラシをかけている時だった。 「えーっ? だってオレ、今さっき、掃除始めたばかりだぜ? あんた一人で行って来いよ」 オレは小さな抵抗を試みた。だが。 「…おいおいシャノ、買い物に一人で行ってもつまらないじゃねえか。な、いいだろ?」 そこで、そういう顔をするかなあ。はあ、とオレは内心ため息をつく。 大の大人がさ、数枚の札が入った封筒握りしめて、顔全部で本当に嬉しそうに、へらへら笑ってるっていうのは、何と言うか。 しかし奴は、そのオレのため息を了解と取ったらしい。 「よし決まりだ」 問答無用で、奴は首に手を回した。ほとんどこれじゃあ拉致だ。 オレも負けじと、モップを抱えて応戦する。 「…やなこった。だいたいあんたがまた昨日、解き油の缶こぼすから、オレ大変だったんだぜ?」 「あーごめんごめん。じゃあ市場でチョコレートを買ってやるからさ」 ずるずる。 …結局オレを拉致した腕、解く気はない訳ね。はあ。 いや、行くのは嫌いじゃない。 ただ、ロブときたら、行ったら行ったで、ガキのオレよりガキの様に、あちこちでこれがいいあれがいい、って金に限度があること忘れた様に買い込もうとする。さすがにそれに付き合っているのは気が気ではない。 「すみません、これ…」 げげ。オレはいつの間にか横に居ない奴に慌てて振り返る。ちょっと目を離したらこれだ。 何か、如何にも高価そうな果物を手にしている奴が目に入る。この星系にはない、濃い色の、甘い甘い匂いのする、中身も甘いらしい果物。 「あー、もう、だめだめだめだめ」 オレは慌てて、林檎の山の方に手を伸ばした。 「おっさん、そっちは駄目! こっちね、こっち」 そう言って、オレはぎっ、と奴をにらみつけた。 八百屋のおっさんも、高い果物一個や二個と、林檎一袋ならまあいいか、という顔をして、クラフト袋にぎっしり詰め込んだ。 林檎は量り売りだ。でかい玉がごろごろと中で押し合いへし合いしている。 「…あーあ、やっぱり付いてきて良かったよ」 オレは頭を抱えた。 「へへへ、そうだろ?」 「そうだろじゃ、ねえってえの! …ったく、あんた一人で行かせたら、今月の生活費が、全部今日だけで飛んじまうじゃねえの!」 「そんなことは無いって」 「そんなことあるって!」 現にさっきだって。 だいたいオレが住んでるだけで、食費は以前よりずっと、かかってるはずなんだ。 だからそのあたりはきっちり締めなくてはならない。それはもう、オレにとってほとんど使命感に近かった。 「あ、そう言えば、チョコレートチョコレート」 「…いいよ」 「まあガキは遠慮せずに」 「おい、変なところでガキ扱いすんなよ!」 ぐい、とまた奴はオレの手を引いた。何だって画家がこんな力が強いんだよ。本当にこういう時、奴は強引だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.06.30 20:18:08
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