論語と算盤【立志と学問】/渋沢栄一
君子の道は妄語せざるより始まる/司馬温公 P34常に学問を進めて時代におくれぬ人であったらば、私はいつまでも精神に老衰ということはなかろうと思う。P36私は常に精神の向上を富と共に進めることが必要であると信じている。P38私は極楽も地獄も心に掛けない、ただ現在において正しいことを行ったならば人として立派なものであると信じておる。P38自分が正義と信ずる限りは、あくまで進取的に剛健なる行為を取って貰いたい。正義の観念をもって進み、岩をも徹す鉄石心傾倒すれば、成らざることなしという意気込みで進まねばならぬ。P39衷心豪も疚しいところがなければ、かえって多大の教訓を与えられ、一層剛健なる志を養い、ますます自信を生じ、勇気を生じて猛進することができ、次第に壮年に進むにつれて有為なる人物となり、個人としてもはた国家の一柱石としても信頼しうる人物となるのである。P39大勇猛心を発揮して活気を縦横に溢れしめ、区々たる情弊を打破して、向上の道を猛進せねばならぬ。P40何か一と仕事しようとする者は自分で箸を取らなければ駄目である。P43小事を粗末にするような粗大な人では、所詮大事を成功させることはできない。P44その大きなことは片々たる小さなことの集積したものであるから、どんな場合をも軽蔑することなく、勤勉に忠実に誠意を籠めてその一事を完全に仕遂げようとしなければならぬ。P45根幹となるべき志が立ったならば、今度はその枝葉となるべき小さな立志について、日々工夫することが必要である。P46十有五にして学を志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る/孔子 P47立志の要はよくおのれを知り、身のほどを考え、それに応じて適当なる方針を決定する以外にないのである。P48人間にはいかに円くとも、どこかに角がなければならぬもので、古歌にもあるごとく、余りに円いとかえって転びやすいことになる。P49一般に一大覚悟をもって、万難を排し勇往猛進すべき時である、それには不断心身の健全なる発達を促し、溌剌たる活動をなしうる活力を旺盛ならしむる心掛を忘れてはならぬ。P55