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母が書道を教えられる資格を持っているということもあり、幼い頃から書道は身近にあるものだった。 絶えず墨と筆が机の上には置いてあり、手紙の宛名書きもサラサラと筆で書くし、賞状などに名前を書き入れる仕事をしていたこともあった。 その影響で私も妹も一応書道は嗜んだが、二人揃っていかほどの才能もないねと頷き合った。
が、決して書道が嫌いな訳ではない。 父が亡くなった時、写経をした。 般若心経、書く? 母に聞かれこっくりと頷く。 墓に納骨する際に、遺骨の上へそっと被せるようにして、母と妹と3枚分の写経を一緒に納めた。
祖父と祖母が亡くなった時にも書いた。 祖父が亡くなった時は私はまだ2年生だったので漢字も録に書けない有り様だったが、それでも休憩し持って書き終え、とても達成感を感じたことを覚えている。 我が家では朝と夜に仏壇に読経する習慣があり、幼い頃は祖母が、今は母が続けている。 既に2年生の頃には、この朝のお経と夕の般若心経の二つのお経を丸暗記していた。 毎日毎日聞いていれば、そりゃあ覚えもする。
写経は、ただ下に敷いたお手本に従ってなぞるだけだが、とても楽しい。 気持ちがスーッと落ち着いて呼吸が深くなる。 精神統一。 書き終えた時のあの目の前が開ける清々しさは、何者にも変え難い。 書くこと、それだけで供養になるのだと言う。 祖父、祖母、父のことを想い、筆を走らせる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023/03/02 07:41:44 PM
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