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2007/05/22
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カテゴリ:la litterature
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今夜は 中原中也 ♪



1907年(明治40年)4月29日に生まれた中也は今年が生誕100年です

(井上靖もたしか、生誕100年で、5月6日頃だったように記憶しています。)


「在りし日の歌」は中也が亡くなった翌年に出版された詩集ですが、生前
彼の手で編集されたものです


  骨

 ホラホラ、これが僕の骨だ、
 生きていたときの苦労にみちた
 あのけがらはしい肉を被って、
 しらじらと雨に洗はれ、
 ヌツクと出た、骨の尖。

 それは光沢もない、
 ただいたづらにしらじらと、
 雨を吸収する、
 風に吹かれる、
 幾分空を反映する。

 生きていた時に、
 これが食堂の雑踏の中に、
 坐っていたこともある、
 みつばのおしたしを食つたこともある、
 と思へばなんとも可笑しい。

 ホラホラ、これが僕の骨----
 見ているのは僕? 可笑しなことだ。
 霊魂はあとに残って、
 また骨の処にやって来て、
 見ているのかしら?

 故郷の小川のへりに、
 半ばは枯れた草に立つて、
 見ているのは---僕?
 ちょうど立札ほどの高さに、
 骨はしらじらととんがっている。
   (在りし日の歌)




詩稿は中也の亡くなる3週間前に小林秀雄に託されました

小林秀雄・・・・・・・・・・・・

評論家小林秀雄により、中也は、魂の詩人とまでに呼ばれるようになった

幼い頃は神童と言われた中也中学では、文学に浸り、落第、京都立命館中学に編入
バイオリンを弾きながら全国放浪をしていた永井叙に会い、冨永太郎とも出会う
そして、永井を通して長谷川泰子に出会った。
大正14年、中也は、泰子と上京そして、小林秀雄との出会い。



大正が終わろうとする時代、14年11月、冨永太郎が病死

小林との交流が深まる中で、泰子は小林のもとへ走る

小林秀雄は中也に絶縁状を突きつける

東京の真ん中で一人になった中也が詩人として歩みだす


    生ひ立ちの歌

     幼年時

 私の上に降る雪は
 真綿のようでありました

    少年時

 私の上に降る雪は
 霙(みぞれ)のようでありました

   17-19

 私の上に降る雪は
 霰(あられ)のように散りました

   20-22

 私の上に降る雪は
 雹(ひょう)であるかと思はれた

   23

 私の上に降る雪は
 ひどい吹雪とみえました

   24

 私の上に降る雪は
 いとしめやかになりました・・・・・


             (山羊の歌)


小林秀雄は、「中原中也の思い出」という中でこう書いている

三人の協力の下に(人間は憎みあうことによっても協力する)
奇怪な三角関係が出来上がり、やがて、彼女と私は同棲した。この忌わしい
出来事が私と中原の間を目茶苦茶にした



小林秀雄特有の、否定文の畳み掛けでなお文章はつづく・・・


  中原の心の中には実に深い悲しみがあって、それは彼自身の手にも余るもの
であったと私は思っている。

彼の誠実が、彼を疲労させ、憔悴させる。彼は悲し気に放心の歌を歌う。
川原がみえる、蝶々が見える。だが、中原は首を振る。いやこれは「ひとつの
メルヘン」だと。私には、彼のもっとも美しい遺品に思われるのだが。



小林秀雄に「もっとも美しい遺品」と言わせた作品は

 秋の夜は、はるか彼方に、
 小石ばかりの、河原があって
 それに陽はさらさらと
 さらさらと射しているのでありました

 陽といっても、まるで硅石か何かのようで、
 非常な固体の粉末のようで、
 さればこそ、さらさらと
 かすかな音を立ててもいるのでした・・・・・・・・・・




この文章の構成、雰囲気は、そう、私の大好きな宮沢賢治のものと似ている


実際、中也は、「春と修羅」を何度も読み返して愛読していました。
たくさんの童話たちも読んでいました。


私には、この作品は小林秀雄が書くように、悲しみに押しつぶされ、人生に衝突し
詩にも衝突した告白文だとは思えない

それは、小林が中也の女を奪ったというところからくる見解なのかもしれない。

私には、中也は、後年、悲しみや苦しさも突き抜けた感じがする
賢治が見た世界にも似た一種のイーハトーブのようでさえあるように思えてしかたない。



小林は、また、「死んだ中原」の中で


  ああ、死んだ中原
  僕にどんなお別れの言葉が言へようか
  君に取り返しのつかぬ事をして了つたあの日から
  僕は君を慰める一切の言葉をうつちやつた




と書いている。

女を奪ったということが小林の中でも重い翳を落としている

より苦しみ、引きずったのは小林秀雄のほうかもしれない。。。



 

                         復刻 「春と修羅」  宮沢賢治
                         復刻 「在りし日の歌」中原中也







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Last updated  2007/05/23 12:47:09 AM
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