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2008年05月19日
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カテゴリ:Luonto
sarastaa


人生は驚きの連続だ。
われわれが自分の生涯を築いているとき、
あすの気分、喜び、活力は、きょうのうちには分からない。
むろん一段低級な状態、日常のきまりきった分別くさい行為のことなら、
いくらか分かりもするが、しかし神の手になる傑作、
魂の全面的な成長や普遍的な動きは、神がお隠しになる。
予測することは不可能だ。

真理がすばらしいもので助けになることが分かっても、
どんなふうに助けてくれるのかはわたしには検討もつかない。
実際にそうなることが、そうだと分るためのたったひとつの入り口だからだ。

前進をつづける人間の新しい位置には、
むろん旧来の位置にそなわっていた能力がことごとく受けつがれているが、
しかしどれもこれも新しいものになっている。
新しい位置は、過去の活力をそっくり胸にかかえているが、
しかもそれ自身は新たな朝の息吹なのだ。

わたしは新しい一瞬に、自分がかつて蓄えていた知識を、
すべて空しくうつろなものとして投げ捨てる。
いまこそ初めてわたしには、何であれ、ものが正しくわかったような思いがする。
いちばん簡単な言葉でも、
愛と志をいだいているときでなければ、われわれには分からないのだ。

才能と品性のちがいは、
踏みなれた旧来の道をめぐりつづける器用さと、
一段すぐれた新しいゴールめざして
新しい道をつけようとする活気や勇気とのちがいだ。

品性は現在を圧倒的に卓越した時間に変える。
おのれとともにいるすべての者たちに、
かつては思いもしなかった多くのことが、
実際には可能であり、すばらしいということを悟らせて、
彼らを強化してくれるような、
決然たる快活な時間に変える。

品性は個々のできごとの印象を鈍らせる。
征服者をまのあたりにすれば、どれであれ、
特定の戦闘や戦勝のことなどあまり考えない。
これまで困難を誇張してきたことが、
われわれにもようやく分る。
彼にとっては苦もなくできたことなのだ。

偉人を動揺させたり苦しめたりすることはできないもので、
できごとは彼の頭上を、
たいした印象も残さずにとおりすぎていってしまう。
ときには世間でこういう言い方をすることもある。
「どうだ、わたしの征服したものは。
 どうだ、わたしの心の晴れやかさは。
 こういう暗いできごとを
 完全に打ち負かしてしまったわたしの手ぎわはどうだ」
それを聞いて、もしもわたしがその暗いできごととやらを
いまだに思い起こすようであれば、まだまだだめだ。

本当の征服とは、その災厄が、
前進しつづけるこれほど広大な歴史の中では、
とるにたらぬ結果しかもたらさぬ早朝の片雲として、
そのまま薄れて消えていくように計らうことだ。

われわれが飽くことを知らぬ願望を感じながら、
ぜひともわがものにしたいと思うのは、
たったひとつ、自分自身を忘れること、
衝撃を受けて身につけた作法からぬけ出すこと、
我々の普及の記憶を失い、
何かを方法も理由も知らず行なうこと、
要するに新しい円を描くことだけだ。

心が燃えずに、かつて偉大なことが成就されたためしはない。
この生き方はすばらしく、
おのれを投げ出すことによって生きる道だ。

歴史にそなわる偉大な瞬間は、
たとえば天才や信仰心の産物のように、
理念の力によってことを行なうための設備なのだ。

「人間は」、オリヴァー・クロムウェルは言った。
「自分の行き先を知らぬときほど高みにのぼることはない」
夢や酩酊、阿片やアルコールの使用は、
神意にかなうこの精神と似てはいるが、
実は模造で、だからこそこういうものには、
人間を引き寄せる危険な魅力がそなわっているのだ。
おなじような理由から、
たとえば賭博や戦争の場合のように、
人びとは狂おしい激情に助けを求め、
なんとかして心に宿るこの焔と豊かさをまねようとする。



(酒本雅之訳『エマソン論文集』(下巻)「円」P.65-67)







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Last updated  2008年05月19日 22時24分59秒
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