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2019年06月28日
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【意欲と楽しさについて】

 ★棋士・羽生善治氏の言葉から―

 ◎「意欲」を生み出すには、囚われない心をもつことが肝要である。
  囚われない心がいかに大切かを述べてみたい。

  「好きなことが見つからない」若い人からよく聞く言葉だ。
  しかし思うのだが、好きなことが見つからないとはいえ、何か関心のある
  ことはあるはずだ。

  ただ、関心の対象によっては、それをするために物理的な問題やいろいろな
  制約など、なんらかの障壁が生じてくることはある。当然のことだ。

  その大変さがあったとしても続けられるものは本当に必要なものであるし、
  またそれは、時々に移りゆくもので、同じ障壁がずっと立ちはだかっている
  ことはないと考えている。ともかくも、試してみないと分からない。

  私が初めて将棋と出合ったときも、もちろん、最初からこの道へ進みたい、
  と決めていたわけではない。

  小学校1年生のときに近所の友だちに誘われて初めて将棋に接した。
  ほどなく将棋教室に通うようになった。

  毎週土曜日、家族で駅まで買い物に出かけたときに、両親は自分たちが買い
  物したり、用事を済ませたりする間、たぶん三、四時間の間のことだったと
  思うが、この子は道場で遊ばせておこうということで……いうなれば学童
  保育のようなかたちで、私は将棋道場へ通うことになったのだ。

  初めは、よく負けた。
  通い出した当初はずっと負けてばかり。

  毎週土曜日に三時間、まだ始めたばかりの頃から一日だいたい十局くらいは
  指していたと思うが、それを一、二か月の間続けても一回も勝てなかった。

  それでも将棋に限らず、ゲームに負ければ面白くない。
  普通だったら「もう面白くない」と言ってやめてもおかしくないくらいの
  さんざんな負けようだったと思う。

  ただ、私は、それでもイヤになることはなかった。
  負けても全然―悔しいとは思ったけれど、それ以上に楽しかったのだ。

  実戦で指せるのは週に一回のその時間だけ。
  土曜日の、その三時間しかない。

  それ以外の日常生活には、将棋に付き合ってくれる相手がいなかった。
  だから、その時間は私にとって、とても貴重な、大事な時間だったのだ。

  それでも続けたのは、やっぱり楽しかったからだ。
  勝っても負けても関係ない。

  負けても悔しくないわけではないが、悔しさよりも「次の一局を指したい」
  という気持ちのほうが圧倒的に強かった。

  (参考文献:羽生善治著 「直感力」 PHP新書)

________________________________________

 *子どもにとっての「意欲」とは、好きなこと・好きなものにつながっている
  ことが多いようです。

  それは年齢が下がると、関心ということになるでしょう。

  羽生さんは、負けて悔しいという思いもありましたが、将棋そのものが好き
  だった(関心があった)。

  そして何より楽しかったことが一番だといっています。

  楽しかったから、負けても将棋をしたかったのだといいます。

  文中に「囚われない心が大事だ」とありましたが、負けることに囚われず、
  将棋を楽しもうとしたところに、今の羽生さんの強さの根源があるように
  思います。
  
  仕事でも、大変さのある中に、楽しみを見つける姿勢があれば、何かが
  変わるかもしれません。






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最終更新日  2019年06月28日 07時00分06秒
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