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カテゴリ:書き下ろし短編
新型コロナウイルスの感染拡大の第5波を受けて私の住む神奈川県も10日ほど前から緊急事態宣言が出された。テレビを見ていると従来型よりもデルタ株は非常に感染力が高く、アメリカでの調査ではワクチンを2回接種した人でも重症化リスクは避けられるものの、普通に感染してしまうほどの強力な株なのだそうだ。このデルタ株が流行り始め、専門家の人たちは「この株は従来型の物とは別物だ」と言っている。なのに、なかなか人流は減らない。感染者も減らない。何故なのだろうか?もう1年半以上続けてきたコロナ対策に疲弊してしまったことや慣れて来てしまったことも要因の一つであると思う。でも他にも要因がある。それは「情報の偏り」だ。
パソコンやスマホが普及してとても便利な時代になった。検索することでいろいろな事がすぐにわかる。それは良い事なのだが検索する事によって、その検索者の欲しそうな情報が次からの検索に反映される。インターネット通販で商品を注文すると、次回にまた商品検索すると「あなたへのお勧め」と、関連商品が掲示される。この様な現象を「フィルターバブル」と言う。これを繰り返していくと検索者が欲しそうな情報はたくさん出てくる。しかしあまり興味のない情報は表示されない。まずここで情報が偏ってしまう。
その上、自分の気に入った人をフォローする事で似かよった人からフォローされる。これが繰り返されると似かよった者達の集団が出来る。そしてその集団の中にいると、もし間違った情報が流れて来ても「この人が言うことなのだから間違いない」と言う心理が働きデマが拡散される。これを「エコーチェンバー」と言う。閉じた小部屋で音が反響する事にたとえた現象からきている。
エコーチェンバーの例を挙げると元アメリカ大統領のツイッターだ。「地球温暖化なんてありえない」「新型コロナは風邪のようなものでたいしたことはない」「マスクなんて着ける意味がない」等々、信じがたい発言をしてきた。それを支持者たちは信じ込んでしまった。そのお陰で何人の人が感染して、そして亡くなったのだろうか?このエコー=チェンバーの世界に入り込んでしまうと正しい情報が見えなくなってしまう。例えばSNS上では「ワクチン接種をすると遺伝子が組み替えられてしまう」「不妊症になる」等々。この様に間違った情報を信じてしまう。とても怖い事だ。
今スマホを持っている人の半数が情報をスマホのみから収集しているそうだ。20歳までの人は80%がスマホのみで情報収取しているそうだ。パソコンならば画面が大きいのでスクロールする事でいくつかの情報を見比べる事が出来るが、スマホだと画面が小さい分、自分が好む上位に表示された少しだけの情報を信じてしまう。
最近、テレビは見ない、ラジオも聞かない、ましてや新聞も読まない、そんな人たちが増えているようだ。この様なマルチメディアからの情報はいろいろな角度から検証されているお陰でインターネット上の情報よりも確信性が高い。私のように毎日情報番組を見ているものにとって、今の現状を理解してデルタ株が恐ろしいもので、どのように過ごさなくてはいけないのかが分かっている。しかし、偏った情報しか知らない人にとって今の現状が理解できないのだと思う。スマホのみで情報を収集している人の中にはデルタ株の存在自体知らない人が居るかもしれない。こんな偏った情報しか持たない人がいる限り人流を減らし新型コロナを終息させるのには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。 令和3年 8月 12日 (木) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.08.12 11:57:30
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