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❖ 北條不可思 "Song & BowzuMan”『歌うお坊さん』ブログⅡ・愚螺牛雑記 ❖

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2008/09/02
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カテゴリ:カテゴリ未分類

『野の聖』1986 Drawing By Fukashi Hojo

野聖物語/Yahijiri MonogatariCopyright ©  Special JION Music


【野聖物語・YahijiriMonogatari]について】

「野」とは公職に就かず(求めず)、あえて在野(民間)に生きることを意味し、

「聖」とは、「非僧非俗」にして、心身すべてを耳とし、

そのすべてを呈して、

真実信心【本願他力・阿弥陀如来の智慧と慈悲のはたらき】を、

聞信し歩みぬく姿勢を意味すると窺えます。

そして、「聖」とは、一般に使われるその内容の本質とは、まったく異なり、

みごとに異彩を放っている。


破戒僧でありながら、孤高の念仏聖の後姿・・・野聖*親鸞聖人の生涯の物語は、

時空を超えて、現在唯今も、愚生の心底に響いている。

祖師を親鸞聖人と頂く者は、如何なる人生となろうとも、この念仏聖の風格を、心して巡る日々をおくらねばならない・・・・北條不可思


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
野聖物語*フォトドキュメント




New York Buddhist Church

-被爆の親鸞聖人像/ニューヨーク-
POHTO Copyright 1999 JOAO GOMES  FRANCE 



野聖物語~やひじりものがたり~

 私は、歩いていた。
 この一歩こそが、迷いを断ち切る一歩と信じ、ただひたすら歩いてきた。
 おそらくは、長いこと歩いてきたのだろう。時には宿り木に身を預け、ひとときの憩いを楽しみ、そしてまた歩いている。

 彼の日、私は幼子であった。父も、母も亡くした寄る辺ない身。肩を寄せ合う弟とは生き別れた。握り締めた伯父の手だけが、かろうじて残る血脈のぬくもりだ。だが、それさえも離す覚悟を定める道のりを歩いた。

骨身に染みる娑婆の風は、えげつなく薄情に吹き荒んで、河原に打ち捨てられた命を喰らっている。

すでに陽は落ち、未練の爪が冷たく空に浮かんでいる。こんな修羅の世に身をとどめようがない。踵を返しようがない。だからもう見上げもせずに茜に滲む空に決別を告げた。

桜の花が無常の風に震えていた。川底の石は、浮かぶ術もなく非情に凍えていた。

切迫する我が身を抱えて一歩を踏み出す。

南無帰依佛 南無帰依法 南無帰依僧

 

それでも尚、追慕のような恋しさは明滅を繰り返す。粟粒ほどの疑念に清冽な意識が破られる。とりでの中に身を置いて、静寂が約束されたほとりに佇んでいるのに。

清浄なる身を求める自意識に打ちのめされてしまったのだ。

 

私はふたたび歩き始めた。求め訪ねて季節を重ね、万に一つの知遇を得た。雑行を捨て、弥陀の本願に帰する。我が身を見限る時が来た。それは、偶然なのか、必然なのか。地獄なのか、極楽なのか。救済なのか、堕在なのか。よき師との出遇いも、はからいを超えた法爾であった。荒れた海から吹き上がる風の凄まじさもまた痛快なり。

根を下ろすべき時を迎えた証のように、守り育む新しい命に恵まれた。

ならば、抗う為に歩くのか。いや、これもまたありのままの私なり。

過去も未来も風は風。今、唯今も風は吹くだけ。思いを越えて、雨を呼び、雲を払い、花びらを飛ばし、野山を大地を駆け抜けていく。

 

 

静かな夜に、灯明が糸のように揺らめき、侘しさや切なさを紡いでゆく。

淡く浮かんだ我が身の影に命の不思議が映っている。

経巡るような道もあったか。心定まらぬ日々を怨んで泣いたか。落ちた涙のかすかな熱に正気を取り戻したか。
 いや、聞こえてくるのだ。呈した耳の奥底を震わせて確かに響いているのだ。真実が我を呼ぶ声が、願いが、はたらきが、私には、確かに聞こえるのだ。

南無阿弥陀佛


 私は、今も歩いている。
 摂取不捨の願力に心を任せて、私はただ歩いている。あなたが歩いているなら、私も歩いているのだ。 道はすでに仕度され、闇は破られている。佛智の光明の届かぬ先はない。 影の映らぬ在所はない。
 沈むよりほかない私も、弥陀の願いの船に乗り、彼の岸へと渡る。記憶に刻まれたすべての縁に別れを告げて。
 なればこそ歩こう。罪障脈打つこの体で、命そのままに私は歩く。

この白き道を。     


                           《了》

文/里 寿  朗読/金田賢一


Copyright(C)2007 OfficeAmitaHouse (September 8, 2007)

 

野聖物語★★★親鸞聖人「私の親鸞聖人」

『野の聖/NoNoHijiri』 《歌詩》

 

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Last updated  2009/08/11 07:06:17 PM



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