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カテゴリ: 読書レポート
講談社の週刊モーニングで連載のピアノ漫画、一色まこと著の「ピアノの森」の11巻が12月22日発売になった。9巻が出てから出版社の都合なども含めて長らく休載していたものの、週刊モーニングで連載再開して10巻が出てからは順調に話が進んでいるようだ。
11巻のみどころは、主人公一ノ瀬海のピアノに深く影響を受けた丸山誉子が、消息のしれない海に逢いたいがために数々のピアノコンクールに出場する。しかし、海はどのコンクールにも出場しておらず、逢えずじまい。そんななか、出場したショパンコンクール推薦オーディション2次予選で、彼女の手の故障(腱鞘炎)が明らかになる。 一方、一ノ瀬海は別のコンクールに出場していた。司馬(誉子のピアノの師)は失意の誉子を連れ、急遽会場に向かう。 といったところなのだが、10巻の後半あたりから本格的にコンクールエピソードにターゲットを置いたストーリーとなっているように感じられる。 そして、今回考えさせられたのが「手の故障」、つまり腱鞘炎について。作品中、誉子は手の痛みに耐えながらずっとピアノを弾き続けていたわけだが、一般的な病院で診察してもらうと、大概「とにかくピアノを休め」という指示がほとんど。しかし、作品のなかで「専門医に診せれば、ピアノを弾きながら治療する方法だってあったのに」というピアノの師である司馬の言葉、これはかなり気になるところである。 更に、もっとも心に重くのしかかったのは、主人公の海が誉子の腱鞘炎をみて語ってくれた内容。「腱鞘炎はピアノが誉子に何かを訴えている合図だよ」「痛ければ痛いほどピアノが強く訴えているということ」、そんなピアノの声を無視し続けるから、手に異常をきたしてしまう・・・のか。 つくづくうまい表現をするな、と作品を読んで思わず深い深いため息をつかずにはいられなかった。 つまり、普段からもっともっとピアノと対話しながら弾いていかないとだめなんだ。手の異常だけでなく、音色にしたって、呼吸感にしたって、演奏者だけのひとりよがりじゃだめで、常にピアノから発せられるメッセージを聞き逃さないようにしないといけないんだ。 ピアノをねじふせるような、そんな弾き方が良いわけがない。 ピアノにしたって実生活にしたって、コミュニケーションは大切、ということかな。 っと、ここからは恒例の作品内に登場する音楽たちを紹介しよう。10巻発売の際、レポートを書き忘れたので10巻11巻含めて一気に紹介だ。 ■10巻に登場した曲たち ・ワルツ第9番 変イ長調 Op.69-1「別れのワルツ」(ショパン) ・ワルツ第1番 変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」(ショパン) ・ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1 (ショパン) ・エチュード 変ト長調 Op.10-5「黒鍵」 (ショパン) ・ワルツ第4番 ヘ長調 Op.34-3「華麗なる円舞曲」(ショパン) ■11巻に登場した曲たち ・ワルツ第8番 変イ長調 Op.64-3 (ショパン) ・エチュード 変ホ短調 Op.10-6 (ショパン) ・ソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a「告別」 (ベートーヴェン) ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」(ベートーヴェン) ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」(ベートーヴェン) とこんなところだっただろうか。それと、ひとつ気になったのだが、巻頭目次の下に「楽譜協力」の欄。 「全音楽出版」・・・って?? もしかしたら「全音楽譜出版」の間違いではないだろうか。それともそういった出版社が他にあるのか。11巻のみの誤植かと思い、10巻を確認したら、こちらもやはり「全音楽出版」と書かれていた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 世の中、いまだ「漫画なんて大人の読むものじゃない」なんていう人(実は我が両親もそんな考え方を持っている)もいるが、漫画から得られることって、実はとても多いのではないだろうか。私は小説だって漫画だって楽譜だって(笑)、分け隔て無く自分のなかに取り入れていきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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