暑い夜
昨夜、暑かったから方々の窓を開けて寝た。朝方、怒鳴り声で目が覚めた。「雨降ってるやないかっ。窓閉めろッ」 ショータンが私の部屋の入り口に立っていた。慌ててベッドのアタマ側の窓を閉めた。ベランダ側は屋根があるので、余程の吹き降りでない限り雨は入らない。ベランダに屋根のない和室は、戸が開いていたらタイヘンなことになる。ショータンが閉めたらしく、閉まっていた。ショータンはトイレへすーっと入った。 廊下の窓を閉め、階段の踊り場の窓を閉め、階下のトイレを覗く。窓は開いていた。外にスダレが下げてあるから雨は吹き込まないのだが、閉めた。骨髄液を軟骨に代えるというテストに脚切ってもらって失敗だったから、トントンサッサとはいかない。階段降りるのもトッコントッコンなのだ。 二時にパソコンをやめて寝る時、お月さんがあったのに。星もいくつか見えていたのに。トイレから出て来たショータンは、「おれが寝るとき、窓、ちゃんと閉めたのに、みんな開けやがって。雨の音で目ェ覚めへんねんやったら、窓開けるな!」と言った。まあ、尤もだけど。目敏い私が雨に気付かず寝ているなんて、非常に珍しいことだ。ヤツなんか、雷ゴロゴロ言ってても、ザーザー土砂降りでも起きないくせに。たまたまトイレに起きたら雨が降っていただけやないの。 ショータンの部屋を覗いたら、シャツを着替えているところだった。どういう育ち方をしたのか、夏でもパジャマの下にランニングシャツを着ている。昨夜はまた、半袖シャツだった。羽肌布団の上には、薄手毛布も掛けている。気温15度以下の装備。昨夜は、28度はあった筈。私は、窓を開けて、一昨夜着ていた毛布をのけ薄い布団だけで寝ていた。「このごろ、寝汗が出る。どっか、悪いんかなあ」 心配そうな声で言う。「ようけ着てるから、暑いだけや」 暑くて目が覚めただけか…