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カテゴリ:歴史・文化・伝統
一つの目標として賛同するが、単に観光客目当てなら長期的には失敗するかもしれない。
年々観光客が減少しているのは、訴求力をうしなっていることの現われであり、松島の観光産業自身にも原因があるだろう。豊かな松林を伐採して、そそり立つ旅館・ホテル。そしてマンション。目に見える水質汚濁や漂着ごみ。駐車場の客引きや、アナウンスなどの騒音被害。せっかくの瑞巌寺や行者が修行した史跡がありながら、あまりにも宗教的神聖性や静寂さが失われた観光地となってしまっている。 今回の世界遺産への名乗りについては、一時的利益や、私益の追求の姿勢を改めていけば、今よりも暮らしやすくそして宗教性を称えた町となり、観光客の回復も見込まれよう。 これは仙台七夕にも共通することなのだが、「一度行ったらもう沢山」となるのか、「もう一度行ってみたい」となるのか。今は前者の割合が高いように思う。 目指すべきモデルは、松尾芭蕉が奥の細道で訪れた頃の松島のたたずまい、自然環境ではないのだろうか。 (以下「河北新報」転載) 日本三景松島/「世界遺産」より環境改善を 日本三景・松島について宮城県は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への登録を目指す方針を決めた。 世界遺産は全世界に851件あり、このうち日本は京都や白神山地(青森県、秋田県)など14件。東北では岩手県の「平泉文化遺産」も来年の登録が有力視される。いずれも見る人を圧倒する迫力と魅力にあふれている。 かつて絶景の代名詞にもなった松島は、昭和30年代以降、湾内の水質汚染など環境悪化に直面し、景観の魅力は半減している。いまの松島に求められるのは、積極的な環境改善策で観光地としての好感度を回復させる取り組みだろう。世界遺産への挑戦は、その後でも遅くはない。 県が登録を目指す世界遺産の名称は「松島―貝塚群に見える縄文の原風景(仮称)」。大小約260の島々が浮かぶ松島湾のほか、国宝の瑞巌寺本堂(松島町)や縄文時代の里浜貝塚(東松島市)などが対象だ。 県は(1)縄文時代の風景が比較的保たれている(2)建造物は自然環境と調和し、優れた景観をつくり出している―と、一帯の文化的、美観的価値を解説する。 目指すのが文化遺産といっても、中心となるのは、最大の観光資源である松島海岸と松島湾の自然景観だろう。その松島を抱える松島町の観光客数は1987年の546万人をピークに減少し、2006年は371万人にとどまった。宮城県全域の観光客数はここ10年で逆に2割程度増えており、松島の低調ぶりが際立つ。 松島を訪ねると、湾内の水は濁り、遊覧船の船着き場付近にはごみが浮かぶ。「松島の景観に満足する観光客は昔に比べ少なくなった」。地元の観光業関係者が口にするのは厳しい現実だ。 宮城県は松島の失地回復を図ろうと、1991年から「松島湾リフレッシュ事業」を展開。湾内のしゅんせつや下水道対策、海藻を利用した水質浄化対策などに取り組んでいるが、県は05年に「湾内の低質環境や景観などに明確な効果が表れているとはいえない」との事業評価を出した。 県が同年、住民や観光客を対象に実施したアンケートでは、松島湾の水質、透明度について「汚い」「やや汚い」と答えた人の割合が7―8割に達した。このままの状態が続けば、仮に世界遺産登録が実現し、世界中から観光客が押し寄せるようになっても、真の意味での名勝松島の復権は果たせないだろう。 来年、宮城では大型観光宣伝「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」が展開される。「日本三景」の称号にあらためて誇りを持ち、足元の課題を見つめ直すきっかけにしたい。 2007年07月23日月曜日 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年07月26日 14時03分00秒
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