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カテゴリ:大人編
「うふふふふふふ」
ドアをノックする音に玄関まで来た所、ドアの向こうから笑い声が聞こえて来た。 これがかわいい女の子の声なら、カギを開けるのももどかしくドアを開けていただろうが、 聞こえて来たのは、まるで水槽のエアーポンプのような気の抜けた笑い声。 言うまでもない。羽原だ。 「うふふふふ。ねえ、いるんだろ。早く開けてよ」 誰が開けるか!お前のせいで月を見ると足がすくんで、星を見る度に後頭部に鈍い痛みが走るようになったんだ。もう二度とお前の話に耳をかさねえ」 「うふふふふふ ゴ・ウ・コ・ン」 「なに?今なんて言った」 前言を直ぐに撤回できるフレキシブルな所が俺の長所だ。 「合コンだよ。天下分け目の関が原だよ」 ガチャ いつの間にかドアが開いている。開いたものは仕方が無い。話を聞こうじゃないか。 「僕のスウィートハニーが看護婦さんなのは知ってるでしょ。でね、看護婦さんって忙しくて男の人と知り合う機会がないんだって」 そこで合コンか。仕方ねえ。勤勉に働いている白衣の天使のために俺も一肌脱ごうじゃないか。はっはっは。で、いつだ。 「今日これから」 急な話だな。 「とにかくついて来てよ」 仕方なく、本当にしかたなく俺は羽原と出かける事になった。 付いた先はいつもの病院だった。 「おい、なぜ合コンなのに病院に来なけりゃならないんだ?」 「ふふ」 羽原は意味深に笑う。 ははあ、なるほど、ナース服を見せてから、それから私服に変わった時のギャップを楽しむって寸法か。 クーッ!やるな羽原。これからはただの顔見知りから、ちょっと親しい人に名称を変えてやってもいいぜ。 俺の期待は嫌が上にも上がっていくが、それに反して羽原はどんどん外からの明かりが入らない地下に俺を連れて行く。 「おい、なんか薄気味悪いな」 「そうかな?ほら着いたよ」 羽原は何も書いていない扉の前で止まる。 「着いたって。入ってもいいのか」 「特別だよ。誰にも秘密だからね」 とまたも意味深に笑う羽原。 ついにこの時が来たか。地中深く眠る禁断の楽園に、俺は大きな一歩を踏み出そうとしている。 俺は汗ばむ手でドアノブを握り締め、ドアを開けた。 ギギギギギギ とは音はしない。やはり総合病院の立て付けはしっかりしている カチャリという軽い音だけがしてあっさり開いた。 そして俺が入った途端俺の後ろでドアが閉まる。 中は真っ暗で不気味だ。俺は不気味さを紛らわすため、いきなり部屋の電気がついて三角帽をかぶった看護婦さんがクラッカーを鳴らす所を想像する。 急に俺の目の前でボーと明かりが付いた。その薄ら明かりの中にババアの顔が浮かび上がった。 ギャー! 靴の中に入り込んだゴキブリを踏み潰したような叫び声を上げる俺。 俺は慌ててドアを開けようとするが、外からカギを掛けられているらしく開かない。 それでもガンガンとドアをたたいている俺にババアが声をかけて来た。 「これこれ、さわがしい。ここは神聖な場所じゃ。静かにせい」 看護婦さんの更衣室が神聖な場所なのはうなずくが、それを台無しにしている本人が言うな。 「更衣室じゃと?何を言っておる」 俺は改めてババアの顔をマジマジと見ると、いつも俺たちのやり取りを一番前でゴザを引いて座っているババアだ。 「おいおい、なんでばーさんがここにいるんだ、今日は何も起こらねえ。さっさと帰んな。いや、今日は合コンだから、ふふ俺の身に何かいけない事が起こるかも知れねえが、ばーさんには関係ねえ」 「合コン?おお!おぬしが招かれた男か」 ?招かれた?招かれたとは俺の事だろう。でもなぜババアがそれを口にする。 「わしが招いたからじゃ」 何?てめえババアのクセしやがって合コンするつもりか。合コンとはなあ、もっと花があって若い娘がいて、うれし恥ずかしなんだよ。 「おぬし何を聞いて来ておる」 ?合コンだよな。花も恥らう「合同コンパ」だよな? 「何をいっとる。合コンとは「合掌魂鎮祭」の事じゃ!」 ・・・羽原―!!騙しやがったな! (つづく) 楽天ブログランキング"へ> こちらもよろしく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 14, 2006 06:01:27 PM
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