笑いはすべての浄化作用
さて、今回のお題は「笑い」についてです。
…って、別にpgが研究し、定義したことでもないんですけどね。
故桂枝雀師匠が打ち出した『笑いは緊張の緩和である』という一言は、まさに笑いというものの核心をついた素晴らしい言葉であろうと思われます。
緊張した気持ちをふっとゆるめさせられると、不思議に笑いがこみ上げてくるものです。
枝雀師匠の示した笑いへ課程(『緊張の緩和』)の種別は、四つのパターンになっています。
特にご自身の携わってこられた『上方落語のサゲ』に焦点を絞っての考察があります。
『サゲ』は、落語の最後の部分で、観客が一番笑いを欲する場所。
または、何かに納得して感心したり、今までの噺を完結させ拍手をするところです。
まあ、ここが一番肝心な所ってことですね。サゲのために噺はある、と考えてもいいかも。
具体的に命名された四つのパターンを見ていきましょう。
ドンデン
謎解き
へん
合わせ
『まるく笑ってらくごde枝雀』(PHP研究所)より
簡単に言うと、人は誰でも普段は正常な状態にいるわけで、これだと、別に緊張もだらけもしていないので、何の感情も起こらない。
けれど、なにがしか正常な状態でない部分に近づいていったり、まったくあり得ない状態に転進したりすると、それを正常な状態へ引き戻そうとする感情が起こり、そこに笑いが起こる場合があるよという感じ。
↑まともな文章で書くと、わかりにくいやン\(-へ-;)/↑
では、わかりやすく、一つ一つ実際に見ていきましょう。
まず、「ドンデン」です。
これは「ドンデン返し」という言葉があるように、見ての通り「ドン」の部分でネタフリをし「デン」の部分で全く考えもしないような発想に飛んでいって、そのギャップを笑いで埋めようとするタイプ。
つまり、考えもしないオチを聞いた時、それを「ふんふん、それはどういう意味かな?」なんぞと考えず、笑うという行動で「なーんや、それ。アホなぁ~、真剣に聞いてたけど騙されちゃったなぁ~あはは」と、自分を納得させるわけです。
次に「謎解き」。
これはわかりやすいですね。同じように「ナゾ」の部分がサゲの近く(または噺全体)にあり、それをサゲで「解いて」みせる。
サゲの瞬間まで、ずっと「何故だろう?」と緊張していた観客がサゲの部分を聞き、「あーそうやったんや、おもろ」と正常でなかったことに納得して、今までの自分の「ナゾ」が別段「ナゾ」でもなんでもなかったんだ、と笑うのです。
その次が「へん」です。
これは「ドンデン」と同種類。噺の中で培われていった正常な物語を、最後の「へん」な行動にはじけさせ、それを笑うことで、落語の作り話という面白さを味わうということ。
「ドンデン」との違いは、緊張する部分が「ドンデン」はサゲのごく近くにあるけれど、「へん」には、バネが縮むみたいなワンクッションがないということでしょうか。
最後に「合わせ」。
これもある意味「謎解き」の一種ですね。
いろんな緊張する場面をちりばめて、噺をすすめつつ、最後にすべてを合わせる。
謎解きの変形といえましょう。
…ということは?
サゲというお話の最後に盛り上がるための「笑い」を起こす手段を四つに分けているけれど、大別すると、「正常の状態→正常ではない作り話の状態」という流れと、「正常でない作り話の世界→正常の状態」という流れに大別されて、この→の部分こそ緊張の部分で、それが解けたときに気持ちが緩和され、笑いを起こすということになると考えていいのではないでしょうか。
さて、本題です(←今頃?)。
一番上に書いた笑いはすべての浄化作用ですが、これもまた一つの笑いの効果です。
人は笑うことで、今までの正常でない世界を正常に引き戻せるという、特殊技術を体得していると思われます。
あまりにばかばかしい世界を見聞きしたとき
あまりに愚かしい世界を見聞きしたとき
あまりに不浄な世界を見聞きしたとき
これは、正常な世界で、正常な精神だけで向き合うと「怒り」になったり「幻滅」になったり「嫌悪感」になったりするものです。
すべて負の感情ですね。
でも、これを「笑う」という行動を通せば、その負の感情をごまかすことができるのではないか?
糞尿ネタや下ネタなどは、「笑う」ことで、その場を清めているのです。
この例は多いでしょう。
つまり自己の精神の保護のために、負の感情にならぬように努めて「笑い」を使って気持ちを引き上げることができたり、その正常でない世界をなま暖かくフォローしてあげようという「非常に寛大な気持ち」が持てたりする。
この技術があるかないか。
生きていく中で本能的に持っている自己防衛の方法以外に、その技術を磨くことはとても意義のあることではないでしょうか。
笑いが薄れる世界こそ、一番オソロシイ世界だろうと思います。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
もっと見る
|
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
エラーにより、アクションを達成できませんでした。下記より再度ログインの上、改めてミッションに参加してください。
x
Category
(8)
(265)
(6)
(54)
(28)
(8)
(78)
(3)
(24)
(214)
(7)
(1)
(12)
(2)
(1)
|
|