歌 と こころ と 心 の さんぽ

随分前にグループ展で一緒に活動していたインド人画家ニレン・バット（55）、充子夫妻。
双方がメキシコに留学中に知り合い、結婚してインドに住んでいた。娘が生まれ、「画家で生活するなら日本で」ということで、日本に居を構えている。
それで吾らと知り合う事となった。
あれから何年経ったのだろうか。

その娘のニレン・富士美さんが美大の卒業を来年に控え、娘の発案で記念の「親子展」を開いている。
そう、娘さんが２１歳にもなるなんて信じられない。

ニレン・バット

ニレン・バットの絵は一風変わっている。油絵ながらその特徴をストイックなまでに抑えて、ち密なマチエールの絵を描く。銀の鉛筆で波形の線を描き、油絵の具をカミソリの刃で丹念に塗り込んでいくというもの。

テーマは日本の古民家で、均等な縦じまの地模様の中に抽象的な表現で描かれているその絵は、インド人の描いたものとは思われない。
絵を学んでいる１９７４年のころ、自分の絵の世界を築けという先生の言葉か思いついた技法だという。
インド人アーチスト独特の日本のイメージなのか、突きぬけた色合いの中にも落ち着いた色調を含んでいる。
そしてその絵は、日本的な要素を多分に含んでもいる。

ディティール

娘さんの専攻は何故か日本画で、そのきらきらしたマチエールが昔から好きだったらしい。しかし、入学してから、とても時間のかかる技法だという事を知りかなり戸惑ったらしい。

風貌は父親似で、エキゾチックな顔をしているので日本画がいかにもミスマッチの様に言われることが多いらしい。

富士美さん

こちらも迸る情熱をキャンバスにぶっつけていく油絵とは違い、日本画は物凄くストイックな世界といえる。岩絵の具をニカワで溶いて、平らに置いた画布の上に置いていく作業は、根気と粘りのいるもの。
乾かすのにも時間がかかり、自己を抑制しながらイメージを少しづつ積み重ねていく時間を内包した絵画といってもいい。

まだまだ日本画の端緒に着いたばかり。インド人の血をもつ日本画家。今後、どんな絵を描いていくのだろうか。

ニレンの奥さんはリトグラフを得意とする。こちらも版画という非直接的で面倒な工程を要する技法。

親娘ともストイックで偶然の入り込む余地のないシビアな表現世界だ￥。

◆２０１１年１月２日からは、楽歌「ＴＮＫ３１」と改題してスタートすることにしました。

２００６年５月８日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、２００９年２月中旬より再スタートしました。

★ 「ジグソーパズル」　自作短歌百選（２００６年５月～２００９年２月）