♪ 難しき色を所望の賢婦人むらさき色の絹を好みて
また白生地の染色を頼まれた。旧知の方の紹介でお二人でやって来るが、喫茶店が良いとのこと。パーキンソン病を患っていて、車の運転はできるものの補助具が無いと歩けないというので、椅子のある場所での打ち合わせを希望された。
一人の方の着尺2反だけかと思ったが、連れてきた本人も染めてほしいと2反差し出され、4反染めることになった。店内が薄暗く、照明も昼光色で赤みがあり、色見本が本来の色とは違って見えていたはず。どんな色目を望んでいるのかどういう使い方をするのか、詳しく伺っておいたのでイメージは掴めたので大丈夫だろう。
色の打ち合わせには結構時間をかけた。市会議員を20年も務めた女性で、絹の洋服ばかり着ている人らしく、この着尺を使って洋服を仕立てるつもりらしい。臙脂と紫を希望されている。70歳を超えているので派手な色は無理だが、かといって濃ければいいというものでもない。特に紫は難しい色だ。下手をすると下品になる。派手になると浮いてしまうし、赤味に寄せるか青味に寄せるかで雰囲気は大きく変わってしまう。
お金持ちなので手間はいくらかけても構わない。時間をかけて微調整しながらじっくりと納得するまで染めることになる。着尺は昨年も染めているので要領は分かっている。料理の味付けと同じで感覚がものを言うが、色合わせは得意だし、楽しんでやれそうだ。
嬉しかったのは好物の夏ミカンを頂いたこと。朝採ったばかりの新鮮なやつらしい。“まだちょっと早い” とのコメント付きだが、どうだろう。
いつものところからはまだ連絡がないが、今年はたくさん生っているのを確認してあるので、近いうちに連絡があるだろう。若い頃は、食後に1個をペロリと平らげて「食った~!」と、その醍醐味を楽しんだものだ。しかし、73歳にもなるとさすがにそれは無理。半分ずつ食べることになりそうだ。
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* ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。