車で買い物に行く途中　
助手席で妻が流れる音楽に合わせて　歌っていた
ちょうど松田聖子の「ガラスの林檎」が流れていた

「愛しているのよ かすかなつぶやき
　聞こえない振りしてるあなたの指を噛んだ
　眼を閉じてあなたの腕の中 せつなさも紅を注してゆくわ
　ガラスの林檎たち ガラスの林檎たち・・・」

結婚する前は　手をつなぎ　その鼻歌を聴いていると
幸せな気持ちになった

妻がパートにでるようになって　いつ頃からか
着ていく洋服を気にしたり　化粧が変わったりした
だいたいその頃から　僕に対してやさしく接してくるようになった
パートにでるようになり　人に見られることで変わったのかな
と単純にうれしかった

しかし　ある時　妻の携帯が鳴り　メール着信欄を見ると
知らない男の名前だった
内容を読みたかったけど　既読になり読んだことがばれてしまう
午後になり　妻の携帯の受信箱をみると　
そのメールは消えていた
しかし　送信履歴と受信履歴には　その男の名前がたくさんあった

僕の知らない男の名前・・・
僕に読まれたくないメールの内容・・・

既定事実だけ照らし合わせてみても　いい想像は浮ばなかった

赤信号で車を止める
曲は　ドリームズ・カム・トゥルーの「未来予想図」が流れていた

「きっと何年たっても　
　こうして　変わらぬ思いを
　持っていられるのも　あなたとだから
　ずっと心に描く　未来予想図は
　ほら思った通りに　かなえられてく ・・・」

彼女と反対方向の窓を見る
つまらない男が写っている
彼女にわからないように　胸の奥で深いため息をつく

信号が青に変わり　手を離し　車を走らせた