質ぐさは何だ
船宿喜仙の二階。
若さま「おっ、待ちかねたぜ。遠州屋どうだった}
遠州屋が布袋屋の勘当されていた息子の治助をつれてやってきた。
若さま「治助か?」
治助黙ったまま頭をさげ挨拶をする。
遠州屋「勘当された布袋屋の総領、治助でございます」
若さま「そうか、で、分かったか」
治助は最初知らず存ぜずの一転張りだったが、とうとう全部遠州屋に言ってしまったようだ。
若さま「小吉(しょうきち)、山岡と布袋屋の間に何かいざこざがあったろう」
遠州屋「お察しの通りでした。」
この半月の間に山岡の家の隆之介と治助がひょっこりと出会い、そのいきさつを聞かされたようだ。
若さま「そんなことだろうと思った。治助、山岡が預けた質ぐさは何だ」
遠州屋が、その質ぐさは将軍家から拝領した呉須の皿といって、二代将軍様から山岡家の先祖が拝領した品物だという。
若さま「なに、拝領の品?」
山岡様は以前から布袋屋の客で、3両、5両と融通していたのだが、去年の暮れに、と遠州屋が説明したところで、
若さま「呉須の皿をかたに、百両借りたってゆうんだろう」
遠州屋「そうなんです」
旗本と言っても小禄の貧乏暮らし、当主帯刀が病に倒れた山岡家では金に困って布袋屋に相談したら、こちらも商売なので質ぐに呉須の皿を出してくれるなら百両すぐに出すと言われ、質に入れたという。ところが、高家横川出羽守が突然山岡家を訪ねてきて、将軍家が是非呉須の皿を見たいとの所望、その日は端午の節句の日がよいと。4日以内に皿を手元に戻さなければならないのだと、布袋屋の主人彦兵衛にその日のうちだけ皿を貸してほしいと掛け合う。彦兵衛は貸すが5か月分の利子を付けてほしいと言った。
という訳で、再三再四掛け合ったがだめで、そのうち彦兵衛がぽっくり死んでしまった。
いきさつを聞いていた若さまが
若さま「皿の行方は分からねえ。山岡の息子はしびれを切らして、布袋屋の蔵から
盗み出すことに覚悟を決めた。
(治助の方を見て)
おめえはおめえで、勘当されりゃ赤の他人、後妻への面当てもあって、
山岡の息子に力を貸して我が家へ押し込んだ。どうだ、図星だろ」
治助 「へえっ」
遠州屋「ところが、ねえ若さま、その隆之介って山岡の息子は、刀の持ちようも
知らねえ代物なんでえ、布袋屋へ忍び込むような性根なんかありゃしま
せんよ」
若さま「うぅーん、とすると、おいらの感もそうあてにはならなくなるな。
だとすると、彦兵衛は誰の手にかかったか」
遠州屋「えっ、すると彦兵衛は誰かに殺されたとおっしゃるんですか」
若さま「と、一応は疑ってかかるのが上等だからな」
治助「きっとそうです。親父はおかくと豊五郎に」
若さま「あの二人は何だい」
治助「ただの中ではありません」
若さま「やっぱりねぇ」
若さまに言われたことを探っていたとん平がもどってきた。
彦兵衛を診た医者を見つけ出したと。
若さまに「よーし、親分、その野郎を調べるんだ」と言われ、遠州屋が動こうとしたとき、とん平が行っても無駄なことだという。 若さま「何故だい」
⇒
とん平、その医者は彦兵衛の死んだあくる日に湯治に行くと言って旅に出てしまって、何処に行ったか誰も知らないと。
若さま「うーん、いよいよくせえな」
遠州屋「どうします、若さま」
若さま「よーし、彦兵衛の墓を掘りかえそう」
遠州屋、治助、とん平、顔を見合わせ驚く。
墓を掘り返せば、彦兵衛の死因も分かるし、記帳も手に入る、という若さま。早速、遠州屋に寺社奉行の手配を支持する。
そこへ、おいとが投げ文を持ってきた。
「この事件から手を引け さもなくば後悔しても 追いつかなくなるものと覚悟せよ」との内容だ。
若さま「ふん、小細工をしやがる」
遠州屋「どうしたんです、若さま」
若さま「面白くなってきたじゃねえか。かまあねえから、予定通り動いてくれ」
皆が動いたあと、ゆっくりとお酒を飲む若さまを、心配そうにしているおいと
ちゃんです。
山岡の息子隆之助と布袋屋の娘があっているところを見てた豊五郎の肩をたたくものがいた。屋台の蕎麦屋にいた怪しげな男で島抜けをした安蔵である。
豊五郎に布袋屋の身代を狙っているんだろぅ、という安蔵。
寺社奉行立ち合いで墓を掘り返している。
若さまもやって来た、が布袋屋からは誰も来ていない。
墓を掘り返しお棺を引き上げた。
遠州屋「開けさせましょうか」
若さま「うん」
遠州屋「おい、開けろ」
さぁ、若さまが墓をほれば何かが分かると言っていたが、どうなるのでしょう。
彦兵衛の死骸は・・棺を開けたことで、事件が動きだしたようです。
続きます。