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「よかったねえ、若」「へい」 甲府の町は神輿が出てお祭りで賑わっています。 ども安一行は黒駒の勝蔵のところに来ていました。次郎長が相手なら助っ人の方は引き受けたと黒駒はいいます。次郎長は甚八の縄張りを預かるだけ、甚八の仇とども安を斬れば御用となる、だからここまでは追ってこない安心しろと話しているところへ、見張りに立っていた子分から、次郎長一行が甲府に入って来たとの知らせを受けます。 次郎長一行が落ち着いた旅籠のまわりを早速黒駒の見張りが取り巻きます。 法印大五郎が外の様子を知らせると、鬼吉や石松が喧嘩の用意だけでもしておこうと言いますが、次郎長は「まあ待て、栄次郎さんが来るよ」といいます。 石松が、あれだけ親分に言われたのだから、・・鬼吉と大五郎は、あの気性だから来るかもしれない、といいますと、 「あの人は、おいらを凶状持ちにしたくねえために、きっとお喜代さんを連れて親の仇ってことにするつもりだと思うんだ」と次郎長は栄次郎の考えを見抜いていました。 次郎長一行がいる旅籠が取り巻かれているのを見て、栄次郎は、一人で殴りこむほかないとお喜代に言います。 黒駒とども安は料亭に入りました。 半次とも会え、その半次が料亭に乗り込む方法があるというのです。 栄次郎「そりゃ、なんでい」 女歌舞伎の朝駒一座が、今夜余興をやるというのです。 それを聞き栄次郎は、芝居小屋の方を見て 栄次郎「ああ、これはしめた」 半次 「知ってるんですか」 栄次郎「しってるんでい・・よーし、俺はあの一座と一緒に乗り込むぜい」 栄次郎はお喜代に半次と一緒に何とかして次郎長親分に知らせるように言うと、朝駒一座の小屋に向い、半次とお喜代は次郎長のいる旅籠に何とか入り込むことができ、次郎長に助けを求めます。 黒駒の勝蔵とども安は、朝駒一座を呼んで料亭で賑やかに酒宴の最中です。ひょっとこのお面をつけて踊っているのは・・もしやして?栄次郎ではないですか。 踊りながら、二人の様子をうかがっています。そろそろ・・・屏風の裏に行った栄次郎・・・その屏風を上げると・・・”喧嘩笠”と書かれた三度笠の支度で出てきます。 「おう」と言い前に笠を飛ばし、黒駒とども安の席へ近づいていこうとすると、子分達が取り巻きます。「慌てるねい」と栄次郎。 栄次郎「見る通りたった一人の風来坊だ、がやがや騒ぐのは見っともねえよお」 と言うと、黒駒の勝蔵に仁義を切ります。 栄次郎「黒駒の親分さんへ、手前は上州大前田栄五郎のせがれ栄次郎ってんでござ んす」 黒駒 「なに、大前田のせがれだ。どうしようってんだ」 栄次郎「へい、お前さんご一家にはけっして恨みを持つもんじゃござんせん。 あっしは、このども安を斬りてえんで」 子分達やども安が騒ぐのを黒駒はおさえ「ども安は、この俺が斬らせねえ」と言います。 栄次郎「と言われたって、・・俺はども安を斬るんだい」 「なに、野郎斬っちまえ」の声でドスが抜かれます。 栄次郎「よーし、それじゃこの栄次郎の息の音がとまるまでは、誰彼なしに斬りま すよ」 その頃、次郎長達もお喜代を連れて旅籠を取り巻く黒駒一家の子分達を蹴散らしながら、栄次郎のいる料亭へと向かっていました。 栄次郎一人に多勢ですが、ども安を追いながらのドスさばきはすさまじいばかりです。 (カッコいいですよ。) 場面は、料亭の外に移ります。次郎長達がやって来ています。逃げようとするども安は次郎長に遮られひき返しますが、待ち受けたのは栄次郎。次郎長と栄次郎に挟まれ動きが取れず、栄次郎に斬りかかって行きます。 栄次郎の一刀がども安にあびせられます。そして、お喜代は次郎長が支えたドスで仇を討ちます。
「ども安を斬ったのはお父つぁんの仇を討った海老屋甚八の娘とその亭主の大前田栄次郎さんだ。どうおしなさる」と次郎長が黒駒に聞くと、黒駒は「分かった」とすんなり言い引き揚げていきます。 仇を討ててほっとし素直になった栄次郎は次郎長に、 栄次郎「清水の」 次郎長「うん」 栄次郎「ありがとござんした」 次郎長「よかったねえ、若」 栄次郎「へい」 甲府のみなさんにお騒がせしたことをわびたところへ町方が囲みます。 「お役人様、どうぞご存分に、お調べ願いやす」と栄次郎が言い、皆ひざまづき神妙な態度です。 そして、次郎長一家と栄次郎、お喜代、半次、朝駒一座の一行は上州大前田に向かって旅立っていく晴れ晴れした顔がありました。 (完)
炎の城・・・(7) 2024年06月29日
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