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音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2014年04月18日
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カテゴリ:クラシック音楽



今年のグラミー賞を受賞したマリア・シュナイダーのアルバム。
マリア・シュナイダーといえば作編曲家、ビッグバンドのリーダーとしてジャズ界では知られている存在。
ギル・エヴァンスの弟子としても知られる。
個人的には昔図書館で見つけた 「Coming About 」を聴いた経験しかない。
今回の受賞でクラシック系の作品も書いていることを知った。
アルバムには二つの組曲が収められているが、どちらも連作歌曲とでもいうべきもの。
実によくできた曲で、シュナイダーの作曲家としての高い実力が伺える秀作たちだ。
親しみやすい作風ではあるが、ポピュラー畑の作曲家がクラシックを作曲した時によくある安っぽさが皆無で、クラシックの楽曲として一級の作品だと思う。
ドーン・アップショーはクラシックと他のジャンルに渡るクロスオーバー系の音楽も積極的に演奏しており、やはり以前グラミー賞を受賞したゴリジョフのオペラ「アイナダマール」でもタイトルロールを歌っていた。
個人的にも以前から好きな歌手の一人。
今回も素晴らしい歌唱だが、こんな声とは思っていなかった。
声質や歌い方がチック・コリア夫人のゲイル・モランに似ていると思う。
「Don't Kill Yourself」なんてチックが書いてもおかしくないようなラテン的で不思議な雰囲気のする作品だ。

「カルロス・ドゥルモンド・デ・アンドラーデの物語」はタイトル通りカルロス・ドゥルモンド・デ・アンドラーデの詩をマーク・ストランドが英訳したものに基づいた作品。
カルロス・ドゥルモンド・デ・アンドラーデ(1902-1987)はブラジルのイタビーレ生まれの詩人。
数々の賞を受賞し、ノーベル賞候補になったこともあるらしい。
この曲は叙情的な曲と激しい感情の表出が見られる曲が混じっている。

どちらの傾向の作品もいいが、シュナイダーの劇的な表現力に感銘を受けた。
全体にはアメリカ風なのだろうが、少なからずブラジルの「サウダージ」を感じさせる部分がある。
この部分は生々しく心をグワっとわしずかみにされたような気分になる。
現代音楽ではなく、とてもロマンティックで、感情のうねりが凄く、こういう作品はなかなかお目にかかれないと思う。
特に「プロローグ」の可憐な美しさ、「カドリーユ」のはかないさ美しさなど彼女の旋律の美しさにしびれた。
また「The Dead in Frock Coats」の劇的な感情の表出には泣けてくる。
この曲はセントポール室内管弦楽団との共演で、管が入っているためラテン的な色彩が強調されているが、彼女のオーケストレーションのうまさだろう。

 テッド・クーサーの詩による「Winter Morning Walks」はオーストラリア室内管弦楽団にジェイ・アンダーソンのベース、フランク・キンブローのピアノ、それにスコット・ロビンソンのアルト・クラとバス・クラが加わった演奏。
オーストラリア室内管弦楽団は1975年の設立で、2011年6月にこの曲でニューヨークデビューを飾っている。
その他のメンバーは3人ともマリア・シュナイダー・ビッグ・バンドの一員として昨年12月に来日している。
テッド・クーサーは1939生まれでアメリカのアーカンソー州出身の桂冠詩人。
桂冠詩人とは公的機関から任命された詩人で報酬も与えられる。
クーサーは1998年にガン治療のリハビリで散歩を始め、秋になると次第に健康が回復していった。
12月になると突如として詩を書きたくなって、毎日朝葉書に詩を書いて友人のジム・モリソンに送った。
それを集めたものが「Winter Morning Walks」(2001)という詩集になった。
原詩のタイトルは日付と天気、それに気温が書かれているだけのものだったが、シュナイダーが詩の最初の行に変えている。
この詩集は散歩している時の気分や風景を描いていて、聴いていると冬の寒々とした風景が見えてくるようだ。
この曲は普通の現代音楽だが難解ではない。
古るき良き時代のアメリカの音楽を聴いているような柔らかな気分にさせてくれる。
ゆったりとした叙情的な曲、激しい曲調の曲などバラエティに富んでいる。
ピアノ、ベース、クラリネットの効果が絶大だ。
特にベースが何とも言えない味を出している。
「Walking by Flashlight」の夜の情景の繊細な表現、「 Saw a Dust Devil This Morning」の朝の清々しい気分など、言葉を大切にした音楽作りは見事だ。

 このアルバムはデジパックにブックレットが二つ付いている。
二つの楽団のセションのカラー写真が満載の豪華なもの。
今までこういうものは見たことがないが、嬉しくなるような仕様だ。
彼女の他のアルバム同様マイナーレーベルからのリリースで、なかなか入手困難だが、受賞を機に広く聴かれるべき音楽だと思う。

国内では売り切れ店が多く、amazonでは中古で7000円というかなり高い値付けがされている。
タワーレコードではまだ買えるようなので、ご興味ある方は今のうちに注文することをお勧めしたい。

Maria Schneider:Winter Morning Walks(Artist ShareAS012)

Winter Morning Walks
1. Perfectly Still This Solstice Morning
2. When I Switched On a Light
3. Walking by Flashlight
4. I Saw a Dust Devil This Morning
5. My Wife and I Walk the Cold Road
6. All Night, in Gusty Winds
7. Our Finch Feeder
8. Spring, the Sky Rippled with Geese
9. How Important It Must Be

Carlos Drummond De Andrade Stories
10. Prologue
11. The Dead in Frock Coats
12. Souvenir of the Ancient World
13. Don't Kill Yourself
14. Quadrille

the Australian Chamber Orchestra(1-9)
Dawn Upshaw(s 1-14)
Jay Anderson(b 1-9)
Frankkimbrough(p 1-9)
Scott Robinson(acl,bcl 1-9)
The Saint Paul Chamber Orchestra(10-14)
Maria Schneider(10-14)

Recorded at the American Academy of Arts and Letters in New York City on May 2nd & 3rd,2012(Winter Morning Walks) and at Ted Mann Concert Hall at the University of Minnesota on September 26th & 27th,2012












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Last updated  2014年04月18日 19時56分35秒
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