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音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2022年02月27日
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カテゴリ:その他の音楽

このところ変態ソフトの音源に興味があり、レビューでもいくつか取り上げた。
そのつながりで、芸能山城組の「輪廻交響楽」のハイレゾを購入しようと思ったが、国内の音源はバカ高いし、海外ではリリースされていないので、仕方なく現在も入手できるCDを購入した。
単に音がいいという次元を超えた、高度な技術を使った広大なサウンド空間が魅力的だ。
また、山城祥二の作品が実に素晴らしい。
ブックレットには音楽評論家中村とうよう(1932 - 2011)氏の解説と、作曲者の山城氏から中村氏への書簡の抜粋が作品解説として収録されていて、これが曲を理解するうえで、大変参考になる。
中村氏が、芸能山城組のデビュー作「恐山/銅之剣舞」から5作目の「芸能山城組ライブ」までをプロデュースされたことは知らなかった。
芸能山城組のユニークな取り組みを世の中に広く知らしめることが必要と感じた氏が、ビクターに売り込んだことから、彼らの活動が注目され始めたという。
こういう音楽は優れた目利きと、実際に行動に移す人間がいないと世の中に知られることはなく、このことだけでも中村氏の業績は計り知れない。
また、山城氏の中村氏宛の書簡が曲について大変詳細に書かれている。
本来企業秘密?である音の作り方まで明かされていて、大変に参考になる。
ただ、こういう音作りを引き継いでいる音楽家はいるのだろうか。
この交響楽は生まれ、育ち、新しい生命を生み、やがて死を迎え、土にかえり、生まれ変わるという生と死のサイクルをテーマとしている。
第1楽章「翠生」が最も聴きごたえがある。
「プロローグ」でのトーンクラスタの合唱は8つのパートに分かれていて、ピッチを保ったまま2分以上声を出し続けなければならない。
山城氏はこれを実現するために、次のような方法で実現した。
①シンセで近似したサウンドをサウンドを作り、②そこにテンポを示すクリックのイズをかぶせた。
③その音を合唱団の1/3程人間がイヤホンでモニターしながら声を出し、④残りの2/3がそれを聞きながら声を出すという方法をとったそうだ。
ここでは巨大な太鼓を思わせるサウンドが聞こえる。
これは、一人で持つことの出来る日本の平太鼓をチベット密教方式のばちでたたき、エフェクトを加えたものであるという説明には驚く。
第1節「翠生のテーマ」でのアフリカのピグミー族のやり方を参考にした、ユーモアのあるサウンドもユニークだ。
一事が万事この調子で、山城氏の確たるイメージを実現するための適切な楽器選定や、演奏方法の工夫、サウンドの加工方法等すべてが的確な方法で実現されたのだろう。
音もさることながら、氏の底なしの探求心に驚くばかりだ。
第2楽章は声明や仏教の打楽器、ガムランの楽器を使ったもの。
第3楽章は幻想と瞑想のガムランと呼ばれるスマルプグリガン・タイプの楽器で妖艶なサウンドを作り出している。
沖縄音階に近いバリとジャワのペロッグ音階(5音音階)を使った、ビブラートのない真っすぐな女性ヴォーカルがよく合っている。
第4楽章「転生」は最も長く13分半ほど。
生態系の脈動を表すために、バリ島ジュムラナ地方に伝わる打楽器アンサンブルの一種「ジェゴグ」が使われている。
ジェゴグはバリ島に自生している竹をチューニングしたもの。
音はド・ミ・ソ・ラの4つだけなのだが、ジェゴグが一斉に音を出すと、意表を突く重低音と暖かい包容力のある響きが出現する。
第4節「田園歌」のエンディングの生態系のカタストロフィーを象徴するシンセによる爆裂音(9'30")は凄まじい。
続く「エピローグ」で感動的なエンディングを迎える。
このCDを聞いたら、現地に行って、このCDの素材になった音楽を生で聞きたくなった。
こんなことを思ったのは初めてだ。

芸能山城組:輪廻交響楽 Ecophony Rinne(JVC VICL 23091)

山城祥二(作詞・作曲):輪廻交響楽
1.第1章 翠生
2.第2章 散華
3.第3章 瞑憩
4.第4章 転生

芸能山城組

録音1986年ビクター青山スタジオ





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Last updated  2022年02月27日 16時51分56秒
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