|
カテゴリ:ジャズ
![]() 全く知らなかったピアニストなのだが、Spotifyで流れていて気にいって、調子にのって5枚ほど入手した中の一枚。 一応ジャズなのだろうが、リリカルなクラシック系統のピアノだ。 抜群のテクニックと強靭な打鍵、エネルギッシュな面も見せる。 タイトルが示すように全編が変奏曲のような構造になっている。 ヤロン・ヘルマン(1985-)ha イスラエル生まれフランス在住のピアニスト。 最近イスラエル出身のジャズミュージシャンの名前を聞くことが多いが、彼らに共通な音楽を感じることが多い。 簡単にいうと静的な音楽なのだが、彼らが受けた教育が関係しているのだろうか。 ディストリビューターによると『変奏曲のスタイルを採ったユニークなアプローチ、溢れ出る抒情性、攻撃的な激しいピアニズムで聴かせるソロ・ピアノ作品』とのこと。 ガーシュインの「Summertime」が抒情的ではあるが、今まで聞いたことのないような、驚きの展開で、いっぺんに気に入ってしまった。 オスティナートに乗って次第に熱を帯びていくアドリブが見事。 実に素晴らしい演奏だった。 続く3曲が「Summertime」の変奏という位置づけなのだろう。 タイトルがあって括弧書きで第1-3変奏と称されているので、なんだか紛らわしいことは確か。 各々の曲に「Summertime」の変奏がちょろっと入っているというような感じなのだろうか。 フォーレの「レクイエム」の「リベラ・メ」は原曲の前半のみの演奏だが、これも素晴らしくいい。 躊躇いがちに弾かれるメロディーが、何とも言えない抒情を感じさせ実に感動的だ。 聴いていると、クリュイタンス盤のフィッシャー=ディースカウの歌声が聞こえて来そうな演奏で、バスのリズムの強打もかなり印象に残る。 続く3曲も「リベラ・メ」の変奏という位置づけのようだ。 第2変奏の「Eli Eli」はヘブライ語で「神よ、神よ」という意味だ。 作曲者のダヴィド・ゼハヴィ(1910-1977)はイスラエルの作曲家で、この歌はトラッドとしてユダヤ音楽として親しまれているらしい。 原曲は平易な民謡という感じだが、ヘルマンの手にかかると、鮮烈なロマンを感じさせる曲に変貌している。 エンディングに、フォーレの「レクイエム」の「サンクトゥス」の一節が流れてくるのもなかなかしゃれている。 この「レクイエム」は6曲目から始まる変奏曲でも第4曲の「ピエ・イェス」が使われている。 完全にジャズ化されていて、ビートを強調した野卑な感じ演奏で、メロディーはダイレクトには出てこない。 9曲目の「Ose Shalom」は慰めに満ちたメロディーが聴き手の心を締め付けるようだ。 変奏は2曲だけで、第1変奏はコミカルな曲。 第2変奏は「語り部の時」というタイトルで、パーカッション?入りで宗教的な気分が味わえる。 スティングの「Fragile」はアップテンポのヒップホップ的なごつごつとしたアプローチで、ノリノリのピアノ・プレイが味わえる。 パーカッシブな打鍵にピアノの胴をたたく音も入っている。 おまけに控えめながら声も共演?している。 アルバムの最後はクレア・フィッシャーの「フランシス・ポードラへのオマージュ」。 フランシス・ポードラ(1935–1997)はバド・パウエルとの交友が有名な写真家のこと。 この曲に関するyoutubeの解説によると1997年に自ら命を絶ったポードラを悼んでフィッシャーが作曲したとのこと。 彼らはフィッシャーがフランスに行った時に食事を共にし、後日再訪した時にポードラの自宅に滞在する話まで計画されていたという 印象派風ではあるが、不協和音を伴うハーモニーが、より一層フィッシャーの悲しみを表しているようで、心が痛む。 ということで、初めて聞いたピアニストだったが、抒情的ではあるが表現が平板ではなく、イマジネーションの豊かなピアニストであることが分かった。 今後、残りの音源もじっくりと聞いていきたいと思う。 例によってロスレスを192kHzにアップコンバートしての試聴だが、もともとの録音がとてもよく、音が太く低音が良く出ている。 知らないミュージシャンを聴いたときの喜びが味わえるのは、このような優れたアルバムを聴いたときのためにあるのだろう。 Yaron Herman:Variations -Piano Solo(Laborie 822186024010)16it 44.1kHz Flac 1.George Gershwin;Summertime 2.Yaron Herman;Blossom (Var. 1) 3.Yaron Herman;Facing Him (Var. 2) 4.Naomi Schemer;Jerusalem of Gold (Var. 3) 5.Gabriel Faure;Libera Me 6.Yaron Herman;Fugue (Var. 1) 7.David Zehavi;Eli Eli (Var. 2) 8.Gabriel Faure;Pie Jesu (Var. 3) 9.Yaron Herman;Ose Shalom 10.Yaron Herman;Drops (Var. 1) 11.Yaron Herman;Le temps du conteur (Var. 2) 12.Sting;Fragile 13.Clare Fischer;Hommage a francis paudras Yaron Herman(p) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024年07月01日 22時04分19秒
コメント(0) | コメントを書く
[ジャズ] カテゴリの最新記事
|