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南風のC級シネマ評論

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2007/03/04
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カテゴリ:ドラマ
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 私には、自分ではどうしようもない、「涙のツボ」というのがある。
映画やドラマを見ていてそのツボを刺激されると、後は滂沱の涙である。
止めどなく流れる涙を、どうすることもできない。
もし涙を止めるとしたら、見るのを辞めるしかないのだ。
 このドラマも、まさしくそうした一つだった。

 ストーリー 
同名ベストセラー小説を原作に、歌手・川嶋あいの半生を描くオリジナルドラマ。歌手になることを夢見る少女・あい。しかし、ある日彼女の父親が急死し、裕福な家庭は一転して不幸のどん底に陥り…。

 このDVDをレンタルショップで借りた時は、全くの予備知識がなかった。歌手の川嶋あいの半世記をドラマ化したことも、このドラマをUSENが運営する動画配信サービスの「GyaO」がインターネットで配信したことも、知らなかった。
 川嶋あいについてですらほとんど知らず、知ってる事と言ったら、以前、「めざましテレビ」で「路上ライブを何百回とやっている高校生がいる」と紹介されたのを聞きかじっていたくらいだ。
 ようやく「ひょっとしてこれは・・・」と気づいたのは、第6話「絶望と希望と」まで見すすんだ時である。

 このドラマを要約すると、「父の死後、母親の苦労のもと福岡で歌手になろうと頑張っていた主人公・あいは、母の助言に従い高校進学を期に東京にでる。東京で苦労しながら音楽学校に通ったり、事務所を探したりするがなかなか思うような結果がでない。福岡では母が命を切りきざみながら、あいへの仕送りを続けている。そのことが痛い程解るあいは、自分で切り開こうと路上ライブを始める・・・そうしてようやくのことデビューを果たすが、それは母の死と引き替えだった・・・。」

 こう書くと、本当に「お涙ちょうだい」の筋書きであり、いつものひねくれ者の私は「絶対泣かない!」と思って見るか、最初から相手にしないドラマだ。レンタルショップに置かれていたケースの裏側に、もう少し詳しく粗筋が書かれていたなら99%借りなかったはずである。
 だけどケースのデザインに惹かれて、借りてしまったのである。(笑;こんなこと、よくあります)

 このドラマを見始めても、最初、これが連続放送ドラマだとは解らなかった。確かに第1話・・・第2話・・・と続いて、そのたびにスタッフロール等が流れるのだが、それぞれの回の尺(=放送時間の長さ)が違うので「ずいぶん凝った作りだなあ・・・」と思った次第。恥ずかしながら、おかしいなあ、とは思いつつも最後まで解らなかった。(連続テレビドラマの場合スペシャルの回でない限り、一回あたりの放送時間は一定なので、その感覚しかなかった。さらにインターネット配信なんて、考えもしなかった)

 逆に、それぞれの回で繰り返し使われる母と娘の回想シーンが効果的で、話のポイントがよくわかった。当然ながらこの回想シーンは、回を重ねるごとに長くなっていく。そして最終話での母の死後、福岡のアパートに帰ってきた時に流れたシーン、回想シーンと現実が交互に映し出されるそのシーンは、今思っても切なくなる。母の来ていたシャツを見つけ、抱きしめ、号泣する娘・・・。
 この時、もうすでに「涙のツボ」を刺激されていた私は、テレビの画面を見ることができず、頭の中で、母親の言葉一つ一つを噛みしめていた。

 で、私の「涙のツボ」を刺激したシーンは、というと、それは第4話、福岡での最後の夜の食事のシーン。
 どこの町にでもあるようなラーメン店で、福岡名物だからとラーメンと二人の想い出の餃子をたのむ。

 「お母さん、ごめんね。大変な時にいろいろ準備してくれて、ありがとう。この5万円、大切に使うね。」と娘。
 「ゴメンね、ゴメンね、ちゃんと準備してあげられなくて、ゴメンね。最後なのに、ラーメンしか食べさせられなくって、ゴメンね。一緒に、東京にいってあげられなくって、ゴメンね。ホントに、ホントに・・・ゴメンね」と母・・・

 このセリフを聴くやいなや、涙があふれてきた。となりで見ているカミさんを見ると、やっぱり同じように泣いている。
 ドラマに共感したのも涙の一因だけど、それだけじゃない。私もカミさんも、私たちの4人の子供達の旅立ちの時を思い出したのだ。長女がわが家を離れた時から、三男が家を離れるまで12年の年月が流れている。それぞれに出発の前の日はささやかなお祝いをした。でも、みんな同じようにはできなかった。
 その時のわが家の経済状態に左右されるので、どうしようもなかった。でも、4人の子供達は一言も文句を言わなかった。ただただ、親としてはすまなさでいっぱい。十数年たった今でも、申し訳なかったという気持ちでいっぱいだ。
 このシーンでその気持ちが思いおこされて、ドラマと現実とが見事にシンクロし涙・涙になったのである。

 そしてそこから後は、ドラマの中の物語がまるで現実のことのように思われてしまう。

 母親と娘の「歌手になる」という二人の夢を、夢で終わらせるのではなく「二人の約束」として果たした娘の努力もさることながら、病身の身をおして支え続け、そして時には「一回やっただけであきらめてどうするの。あなたも九州女でしょ」と叱咤する母。どちらかが欠けても約束は果たせなかったはずである。

 親にとって、子供が子供でいる時間は本当に短いけれど、親である時間は長い。と同時に、子供にとっていつかは親と離れ、乗り越えていかなければならないもの。
 そう言った現実のかなでも、お互いを思いやる気持ちが「大切な約束を果たした」という形で結実していった。

 そしてラストシーン。
 会場前の公会堂。父と母の写真を一番前の席に飾る娘。
 「ようこそ一番最初のお客さん。うまくできたら、頭なでてよ。」という娘。
 それは、感謝と悔しさと、決意と不安とが入り交じった言葉である。

 そしてライブ。(たぶん渋谷公会堂?かな)
 流れている歌は「・・・ありがとう...」。
 それは、娘がどうしても伝えたかった言葉。
 そして、母の最後の言葉・・・である。

 このドラマ、ドラマとしてはなんて評価していいか正直、解らない。 だけど、妙に納得させられたドラマである。
 そう、経験則でしか映画やドラマを評価できない自分自身を。

 参考
 川嶋あいについて フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より





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最終更新日  2007/03/04 04:33:38 PM
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