冒険の書
「冒険の書」を作ることに決めた。自分のだ。変わらない人生にはもう飽き飽きしていた。私は書くことが好きだった。いつもいつも何か書いていた。手帳や、日記、小さなノートも持ち歩いていて通勤の電車で、昼休みに、カフェで、いたるところで思ったことを書き連ねていた。人生のいつの時も!しかし2,3年前のノートをふと読み返した。何と今と同じことを悩んでいた。私は、何も変わっていない!私はいつも「思うこと」を書いていた。現状の問題点とかこの先のイメージとかしかしついに今日まで気付かなかったことはすべて思ったことだけで延々とページが埋められてきたことだ。考えて、考えて、ぐるぐる悩んで...自分が成し遂げたことの記録ではなかった。私は考えるだけで何もしていないんだ。だから2,3年前と同じことを悩んでいるんだよ。なんてことだろうか。何もない自分。いつも自分のことをこう思っていたのは何もしてこなかったからなんだ。だから、決めたのだ。自分の「冒険の書」を作ろう。少しゲームめいた響きだが、それがいい。そしてここには、「自分の冒険の歴史」だけを書いていこうと。今までのようにただ思って考えて反省したことを書いたり、もうしない。自分の冒険の「記録」だけを、書いていこう。自分が少し冒険したこと、実際に足を運んで見た、聞いたこと人と会って聞いたこと何かにぶつかって学んだことそれだけを書いて、1ページ1ページを作っていくそういうノートを作ろうって、決めた。こんなことを思ったのは取っているメールマガジンがきっかけで日刊なのだが、いつも私が前日悩んだことどんぴしゃりの内容が翌日に来る、私の波長ぴったりの、不思議なメールマガジンそこにその日、こう書いてあった。人生を、旅だと思ってください、と。すると、変化がない旅よりも、いろんなドラマがある旅の方が面白い。幸福とは、人生という旅全体を楽しむこと。旅は、冒険です。家の中にじっとしていては、何も面白くない。自分から積極的に外に出て行って、人と交わるとたくさんの出会いがある。その出会いの数だけ、人生は楽しくなる。私は今まで、怖がっていたんだ。変化が好きな人間だと自分では思っていたのにそれは憧れだった。気付いてから、今までの人生のいろんなページを思い返せば自分が、どれほど変化を恐れて閉じこもってきたかその証明をしているようなエピソードが山ほど浮かんでその集大成として、今の私がここにいる。遅くたって、まだまだこれからだって、どちらでも構わないがきっと今なんだろう。何かを変える時が昨日入手した私の冒険の書。(と決めたノート。)外国のメーカーっぽいもので真っ白ではなく、少し黄ばんだような黄色の罫線のない紙のノートとおぼろげに決めていた。漂白されたような真っ白の紙に罫線が引っ張ってあるなんて興ざめだったから。私が作っていく、冒険の書。冒険の書たって実際の人生っていうのはファンタジックなことは起きないし魔法も覚えたりしないし、レベルも上がらないし今日も昨日と同じように会社に行って、単調作業したりもするんだよ。でも、そんな私の人生の中で小さな冒険を毎日見つけていくんだ。始めてからまだ2日目だけど、あぁこのままじゃ今日は書く冒険がないなと思って帰り道に違うところに寄ってみたりいつもと違う仕事を依頼されても面倒に思わないでこれが今日の冒険かって思って出向いてみる。この冒険の書の1ページを今日も何か作ろうという思いが確実に私の目をいつもと違うものを見つけるように変えている。だから作っていこうと思う。これで少なくとも2,3年後に何も変わってない私でいるってかなり無理になるだろう。どうなるだろう。明日のページは何も書かれていない空欄で私が作っていく冒険の書。