ピカルディの薔薇
ピカルディの薔薇津原泰水の最新刊。電子化流行りの昨今においてモノとしての「書籍」が生き残っていくためには,コレクターズアイテム化するしかないと常々考えていた。『ピカルディの薔薇』はそれを体現する一品。所有欲を刺激してやまない。金子國義の凝りに凝った装丁と装画。三浦しをんの紹介文を載せた帯紙(腰巻)も,カバーと連動していて,帯紙をしたままでも外してもレイアウトのテイストがかわらないようになっている。それにしてもタイトルと著者名の級数(文字の大きさです)が,帯紙の「好きだー!待ってました,猿渡くん!」の煽りのコピーの級数よりわずかに大きいだけというのは,何という大胆。カバーはゴールドの地に黒のフォント。カバーを外すと,これが反転する。黒のシックな地にゴールドのフォント。鸚鵡(?)を擬人化した集英社のシンボルマークも効いている。いっそ集英社は,文芸作品をこの意匠で叢書化すればいいのに。そのパッケージに相応しく,中身の方もどれもこれも珠玉の掌編。タイトル作品の「ピカルディの薔薇」は,初出の『凶鳥の黒影』で読んだとき,その美しくも残酷なイメージに震え上がり,しかも作中人物に同調してしまって悪酔いに似た感覚に襲われたので,今回はパスしようと思ってたんだけど,また読んでしまった。で,この作品は,結末がわかっていて読むともっと怖いということが,わかってしまいました。そこでその台詞を言っちゃ駄目だー。あー言っちゃったー。うわー。再読に耐えるとかそんなんじゃなくて,繰り返し繰り返し,読んでしまう作品集。一冊だけだとぼろぼろになりそうなので,保存鑑賞用の二冊目の購入を検討中。お勧めです。