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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2007.03.26
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カテゴリ:ヒラカワの日常
雨模様の日曜日
昼ごろ寝床から這い出して
まると町歩き。
藤沢周平を読んでいたら、
そのしょっぱなに、『用心棒日月抄』の青江又八郎が
まるという犬の用心棒をする話が出てきた。
生類憐みの令の時代の話である。
この、まる、
俺んとこのまると実によく似ている。
-こそとも音がしないのは、例によって前脚に顎をのせて
居眠りをしている
-散歩に連れて行っても、どことなく迷惑げで、折角広いところに出してやって
いるのに、犬らしく飛び回るということもない。横着な犬だった。
何処のまるも同じである。
飯を食っていないときは、前脚に顎をのせて横着に目だけ動かして
こちらの様子を伺っているのである。

午後は、ずっと机に向かう。
『株式会社という病』を読み返しているのであるが
どうしても納得がいかないところが出てきて
どうしようかと思案したが、
やはり書き換えることにする。
夕刻になって、やっと形になってきたのだが、
まだ不満足である。
というわけで、牧野くん、あと数日ご辛抱されたし。
今月中にはなんとかなる。
いや、なんとかする。

ぼさぼさの頭と、ひげ面を下げて、
坂下にある『カフェ六丁目』へ。
等々力は坂の多い町で、
斜面を利用して瀟洒な家が立ち並んでいる。
何もない住宅街であるが、生垣や畑などもあり
犬を連れて散歩するのには気持ちのいい風情を漂わせている。
ときどき、チエホフの小説から抜け出してきたようなご婦人が
小さな犬を連れて歩いている。
まあ、俺やまるには不似合いといえば、不似合いな町なのだが、
町に拒否されているといった感じはしない。
ふところが深いのである。

この、ふところというやつが曲者で、
ほんとうは、この町の住人には俺たちは
見えていないと言うことなのかもしれない。
確かに、すれ違っても笑顔を交わすなんていうことがあまりない。
実家のある、千鳥町という町では
ほとんどの人間が顔見知りで、
どんな仕事をしていて、博打や女でしくじったなんていう話は
一晩で知れ渡ってしまうようなゲマインシャフトであった。
まあ、これは五十年も前の話である。
工場の町だったから、
どこかで、誰かが繋がっていた。
あの町のふところはどうだったのかといえば、
多分、他所からやってきたものにとっては、
寒々しいものだったに違いない。
いまは、あの町も等々力の町と大差のない空気になっている。
ふところは深くなったが、
隣には無関心になったということである。

十年一日の町の空気にも、微細な変化があらわれている。
住んでいるときは、その変化に誰も気がつかない。
離れてみないと、微細な変化というものは見分けられないものらしい。










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最終更新日  2007.03.26 15:46:14
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