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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2007.04.06
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カテゴリ:ヒラカワの日常
先日、青山さんからお借りした
ディビット・E・カプラン&アレック・デュプロの
『ヤクザ』(第三書館)がべらぼうに面白い。

初版は1991年だから、もう二十年近く経つ。
原書がアメリカで出版されたのは1986年なので
時間はさらに遡る。

本書はアメリカで「ノンフィクション書籍調査報道者&編集者賞」
を受賞し、話題になった。
前書きによると、
日本からも「すくなくとも18社」が
翻訳出版の名乗りを上げた。
ところが、それが一斉に辞退し始める。
それは、本書が単に、日本の犯罪組織についての
調査であるに留まらず、政治的な意味での戦後日本の暗黒史
を暴き出していたからである。
出版社に圧力があったのか、
それとも自粛というやつだったのかは不明である。

世の中には陰謀史観というものがあり、
それはそれで大変面白いのだが
本書は、そのような際物ではない。
丹念に資料を追って、正史から抜け落ちた
ジクソーバズルのピースを
はめ込んでいくという地道な作業を繰り返している。

登場人物は
多岐にわたる。
日本に自由主義の理想を埋め込もうとするケーディスと
反共の橋頭堡にしようとヤクザを用いようとする
ウィロビーのGHQ内部での確執、
山口組と稲川会の暗闘を利用して
フィクサーとしての地歩を固めてゆく児玉誉士夫。
世界で最もカネのあるファシストと自ら公言していた笹川良一。
そして、河野一郎、大野伴睦、岸信介ら自民党の有力政治家たち。
そして、ロッキード事件。

ロッキード事件のとき、俺はまだ
プータロー状態で、
毎日渋谷道玄坂百軒店あたりをうろついていた。
ブラウン管の向こうには
全日空の社長やら、丸紅の会長、日商岩井の役員らの証人喚問の
様子が写し出された。
「記憶にございません」の小佐野賢治は、田中角栄との間柄を問われ
「刎頚の友」と形容していた。
なるほど、刎頚の友か。
これは、どんなドラマよりも面白く、
証人たちは、どんな役者よりも迫真の演技を見せていた。
ただ、やはりあれは上っ面をなぞっただけの味の薄いドラマでしかなかったのだ。
なぜ、ロッキード事件のようなことが起こったのか、
本書を読むとよく判ってくる。
-日本の政界と犯罪界が裏の世界で共謀しているのが日本の戦後史だという点が
頭に入っていたならば、このように様々な事実の発覚が、日本人にとってショック
な出来事となることはなかったはずである。

ひどいもんだが、これが日本の歴史の一面なのである。
それは、アメリカもヨーロッパも変わらない。
人間の歴史には、必ずこいうった欲とカネが
権力と骨がらみになって進行して行く時代というものがある。
ほんとうは、金融資本主義の時代になった今でも
意匠が変わっただけなのかもしれない。

ただ、残念なのは、
このような歴史の修復作業が
日本人の手によっては行われなかったということである。
『東京アンダーワールド』は
俺が最も感心したドキュメンタリーの一冊だが
これも書いたのはアメリカ人であった。
勿論、ジャーナリストだって、命は惜しいから
相当な覚悟をしなければ、アンタッチャブルに踏み込むことはできない。
しかし、もしジャーナリストが
「善良な市民」を代表するだけの、ただの代弁者であったなら、
このような歴史の裏側は永久に埋没したままになってしまうだろう。

ゲイ・タリーズも、ハルバー・スタムも、ボブ・ウッドワードも
日本のジャーナリズムからはなかなか出てこない。







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最終更新日  2007.04.06 14:46:46
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