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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2007.04.26
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カテゴリ:ヒラカワの日常
ロサンゼルスに入ってすぐに感じた奇妙な感覚は
短い滞在中ずっと、俺の身体から消えることは無かった。
アメリカは、奇妙な脱力感に苛まれているような気がしたのである。
とうとう時差ぼけが直らないまま終わってしまった
今回の渡米だったが、
帰ってきて新聞を開くと
「中国(香港を除く)との貿易額は前年度比16.5%増の25兆4276億円だった。日中経済の相互補完関係が強まり、戦後初めて米国を抜き最大の貿易相手国になった」との記事。
軍事・外交上の最大のパートナーであるアメリカに対して
経済界は一足先に多極化へ向けて歩み出しているということである。
経済には友愛もなければ、義理も人情もない。
カナリヤのように、経済的欲望が息を吸い込むことのできる空気を敏感に察知して
場所を移っていくだけである。

いっぽう、先ごろ発表されたIMFのWorld Economic Outlookによると
世界経済は、これまでと同様に4.9%の成長で推移するが
アメリカ経済は2007年は2.2%に落ち込み、
今後も低成長が基調になることを示唆している。
世界経済の平均の半分以下の成長ということは
相対的に見れば右肩下がりのフェーズに入ったということである。
同時にそれは、世界経済の中心が
アジア、中東、ヨーロッパ、日本といったところに
遍在するという新しいスキームに以降してゆくということである。
それはもう始まっているのか。そうだとすれば、これは大きな
地殻変動である。

様々な指標が、アメリカ経済の後退を示し始めている。
ロサンゼルスの空港で俺が感じた寂寥感も、
こういったことと無関係ではないだろう。
911以降のアメリカは、経済と政治という
二つの牽引力によって股裂きにあったような状態であった。
経済的には市場万能のグローバリズムであり、政治的にはモンロー主義を
彷彿させる単独行動主義である。
単独行動主義はイラクにおける歴史的な敗北によって打撃を受け、
アメリカ経済の活路であった経済フロンティアを食いつぶすというかたちで、
経済グローバリズムもまた、長期的に見ればアメリカのプレゼンスを低下
させることになる。
実際にそのようなことを書いたこともあるが、
思った以上にその影響が早くあらわれたということかもしれない。

過去十年、アメリカ、とくにシリコンバレーは
弱肉強食のアリーナであった。
それが、人間にとって暮らしやすいかどうかは別として
アリーナは人間の欲望をくすぐり、アドレナリンの分泌を
亢進させる場所であったことに変わりは無い。
しかし、バブルの真っ最中においても、
無理やり燃料を補給し続けて走り続けているような
焦燥感のともなう祝祭が続けられているような印象はあった。
外観的には、シリコンバレーはヒューマンスケールを取り戻しつつある
ように見える。
今回いくつかの有力なベンチャー企業を訪問したのだが
いづれも、質素なオフィスで堅実な経営をしているように見えた。
以前であれば、華々しいオフィスに大勢の人間が
赤字を垂れ流しながらも一発逆転の夢を紡いでいた。

親しい友人たちが、
ラットレースから降り始めている。
精神科に通い、もうお金のためだけに走り続けることができないという。
スピリチュアルの学校があちこちにできる。
経済ダーウイニズムの中で戦いつづけていれば、
バランスをとるために、もう一方には極端な精神世界が用意される。
食うだけ食って脂肪の塊になった肉体を
ジムで健康器具に囲まれて走り回ることでそぎ落とすといったところである。
自動車免許を剥奪された今回のアメリカ旅行は
アメリカがいかに歩くことを拒絶したところであるかを思い知らされた旅でもあった。
横断歩道のない、道一つ渡るのにも難儀をしたのである。
すべての道が、車のためにつくられている。
日用品一つを手に入れるためにも、何十分も歩かないと目的地に
つかない。
だいたい、道をとぼとぼ歩いている人間などいないのである。
これが、俺たちがかつて憧れた
ル・コルビジュエの光り輝く街である。

以上は、数日間の滞在の印象に過ぎない。
しかし、どんな公式見解や鳥瞰図的な見通しよりも
時差ぼけで、とぼとぼと道を歩いている疲れた人間の印象が当たっていることがある。





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最終更新日  2007.04.26 20:14:51
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