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カテゴリ:将棋
王将戦
▲豊島△久保で始まった第3局は予想通り後手のゴキゲン中飛車。先手も最近多い▲6八玉型のまま右銀を4六に進出するのを急ぐ手法。 18手目△5六歩で第1局と違う進行に(第1局は△8二玉)。この展開は今期NHK杯の▲佐藤康ー△久保戦(佐藤勝ち)と同じ。 5筋の歩交換をして△5六同飛のところは後手は歩交換に成功して△7六飛もあって後手好調のようだが、飛車の位置が不安定なのが怖いところ。NHK杯戦のように▲3五歩△同歩▲4五角もあったはずだが、本譜は▲2四歩~▲6五角。△5三飛で受かっていそうだが▲3七桂とされると次の▲4五桂が受からない仕組みでなるほどと感じますね。 よって後手は△5一飛と引いて▲4三角成には△4五歩を一回利かして(▲同銀は△5五角)△3二角で馬を消す。 先手は▲5八飛と回って飛車交換を狙えば後手は△5五歩でそれを拒否。 「振り飛車(相手)には角交換」という格言もあるし、「飛車交換は振り飛車有利」という考え方もあるので、この将棋は全く反対の展開とも言えます(振り飛車側は角交換は構わない、という指し方だし、居飛車側から飛車交換しましょう、という手もありましたし)。 さてこの局面、先手は2歩手持ちにしているのが主張でしょう。問題は右の銀桂をどう使っていくかというのと玉が薄い点。 一方後手は4,5筋に位を取ってこれはいつでも突き出して攻めの順が狙えます。また玉を堅く美濃囲いに囲えるのも大きい(先手は▲8八玉▲7八銀としてもコビンが開いているのが嫌味)。問題はこの位が伸びすぎになる可能性があって、▲6五角みたいな筋に気を付けないといけない。また2,3筋の金銀桂をどう使うかというのも考えないといけないですよね。 ▲6八金は一手で上部を強化して固めた手。▲8八銀~▲7七銀も囲いを整えつつ5五や4四あたりから角を打たれる筋に備えているし、場合によっては四段目に銀を使う可能性もある。ただ先手は手数かけてもあんまり堅くならないのはどうしようもない。この間に後手は美濃囲いに囲って強く戦える構えに。 ▲9六歩に端を受けるのは損と見たか(先手は2歩あるので端攻めの筋もある)、△5六歩としていよいよ戦いです。 先手は▲5二歩~▲4一角で後手の飛車を5筋から移動させて馬作りに成功。しかし一歩損しましたし4筋も後手の狙い筋みたいなものなので後手も悪くないでしょう。 ▲5六飛は歩損を取り返して飛車を使う手ですが、飛車が中段に浮いたのでこの瞬間先手陣は怖い(飛車の受けがなくなる)。 ここで△4六歩が手筋の突き捨て。実戦は▲4六同銀を選択。このあたりは先手の予定通りだったようです。 ▲7五馬としたところで封じ手。この局面は先手が香損しているので駒の損得、玉の堅さでは後手がリードしている。しかし悩みの種だった右の銀桂が使えたのは先手にとってはプラスで、後手の馬もすぐに働かないのは後手の悩み。先手としては後手の馬が働く前に中央で大きなポイントを稼げれば十分戦えると見ていそうです。 封じ手は△4一飛。先手の馬のラインから飛車を逃げておいて自分の馬の活用を間に合わす狙い。 △3五歩~△1八馬は遊んでいる馬の活用。しかし先手から攻めがありそうなのでこうやって堂々と手を渡すのも勇気はいりそうですけどね。結果的にこれが勝因だったようですが、こういう落ち着いた順は確かに良さそうです。 △1七馬と歩損も解消しますが馬の働きはまだまだ。先手は▲2二歩△同金と取らせて、とにかく中央の勢力を有利にする狙いと駒の効率で差をつける狙い。 余談ですが、普段指している将棋で自分の形勢が不利な時は「駒の損得」「玉の堅さ」「駒の働き」「手番」の形勢判断の4要素のどれか1つでも主張できる点を作るのが基本(あくまでも基本で、これ以外にもあると思われる)。それを意識しておくと逆転できる可能性ありますね。 先手は後手の金をソッポにやって▲5五銀とあくまでも自分に有利な中央の勢力争いで戦います。後手の△6二香は狙いの反撃筋ですが、銀交換から▲4二銀で先手も後手の飛車を奪います。 △3七歩成と桂を取った所は飛と銀桂香の3枚換えで後手が駒得。ただし後手は歩切れ、1,2筋の金桂香が遊んでいる、後手の馬の働きが悪い、と考えていくとここでは形勢はまだまだはっきりしないか、後手がリードしていても微差でしょう。 5筋成り捨てから▲5二歩は先手の期待の攻め。と金攻めは強烈なのでこの攻めが決まると先手が勝てます。 △6五銀は飛車をいじめつつ先手玉周辺に手掛かりを作る狙いで、馬の活用も狙っています。 これに対して本譜は▲4六飛ですが、ここでは▲5一歩成△7一金の交換を入れておいたほうがよかったようです。 後手は△4八と~△5八とでさらに金も得して大きな駒得。△7一金も堅さをある程度キープする手堅い一手です。 △7六銀としていよいよ先手玉に食い付けた格好。後手の6二の香が攻防によく利いてます。こうなってみると戦力差(駒の損得)と玉形の違いがでかいですね。 ▲8六馬は粘りの手ですが、△5七歩~△3九馬と貴重な一歩を使いつつ馬を活用できたのは大きい。先手としてはこの馬が遊んでいてくれないと割に合わない(駒損でかいので)ので、こうなるとはっきりしてしまった格好です。 最後△8八金からは即詰み。「金はとどめに残せ」という格言を信じてると浮かばない詰み筋です。見事な詰手順ですね。 結果的には駒得した後の久保王将の落ち着いた指し回しが良かったという感じでしたね。豊島六段としては駒損でも中央の勢力と駒の効率で勝負できると考えていたようですが、結果が出ませんでした。 これで久保王将が2勝1敗と一歩リード。次勝てば防衛に王手となるので有利ですね。 豊島六段としては次は勝って食いついていきたいところでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.02.10 21:28:35
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