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カテゴリ:将棋(静岡)
支部対抗戦の個人戦のブログ記事がまだ途中ですが、10日のシニア将棋名人戦の県大会決勝の将棋を紹介します。
開催場所は静岡市清水区の日本将棋連盟清水支部道場。 シニア戦という事で60歳以上が対象で、参加者は18人。 ルールは午前中の予選は25分切れ負け、午後の決勝トーナメントは30分切れ負け。 予選は3人または4人1組のリーグ戦で2勝通過、2敗失格システム。 2勝予選通過者は午後はA級(決勝トーナメント)、2敗失格のうち希望者はB級(敗者トーナメント)の参加となりました。 シニア戦という事で将棋経験の長い方々が多かったと思います。ベテランらしい将棋になるかと思いきや、最新形の将棋もあったり玉をがっちり囲ったり激しく攻め合ったりと将棋の内容は皆若々しい感じでした。 それから会話をしながらの対局、が多かったですね。自分も年配の方と指す機会がこれまで多かったのでこういう雰囲気は好きですね。 決勝はYさんとOさんのカード。どちらも県内強豪なので実力者同士の対戦となりました。 将棋は先手のYさんから角交換をしての四間飛車。さらに向かい飛車への振り直しという出だしで1図になります。 1図以下▲1八香△2四歩▲1九玉△2五歩▲2八銀△7四歩▲3八金△7三桂▲4八金左(2図) Yさんは最初から穴熊の予定だったのかもしれませんが、1図の△3五歩とされれば穴熊にする人が多いのではないかと思われます。 1図からもちろん美濃囲いにする作戦もあるのですが、これは△3五歩の位の圧力がちょっと嫌味。また7三や6四あたりから角を打たれてコビンを狙われる筋も警戒する必要があります。しかし穴熊にしておけばそういった攻め筋をある程度緩和できるのが大きいでしょう。 対する後手の2筋の歩伸ばしは重要。穴熊攻略の準備の手で、将来△2六歩と突いて先手の穴熊を崩す狙いがあります。 先手の▲3八金では普通は▲3九金ですが、後手が上部から圧力をかけてきているので金の位置は3九よりも3八のほうが上部への備えになっています。 このあたりはお互い相手の作戦、指し手を見ながら指し手や方針を決めている感じでしょうか。もし後手が居飛車穴熊にしていたら先手の右金も3九だったのではないかと思われます。 少し進んで3図。ここまではYさんの消費時間が1分ほどで、これだけ早く指しているという事はある程度予定の作戦だった、と言えるでしょう。一方後手のOさんはここまでの消費時間が6分ほどで、慎重な駒組みをしているという印象でした。 まだ駒組みが続くかな?▲5六歩は大丈夫なのかな?という局面ですが、後手はここから動きに出ます。 3図以下△3六歩▲同歩△7九角▲5八飛△2四角成(4図) 後手は3筋突き捨てから馬を作る順に出ました。 4図は後手が一歩損です。しかし後手は△8五歩からの歩交換で一歩手持ちにする手が残っています。歩損していても持ち駒に歩があるかどうかは重要で、歩損していても持ち駒に歩があればそれほど歩損を気にしなくても良い事が多いかと思います(横歩取りなんかがいい例)。 また先手は△7九馬と入ってくる手も警戒しないといけません。 さて4図でどう指すのかと思いましたが・・・。 4図以下▲6八銀△8五歩▲5七銀△8六歩▲4六銀△8七歩成(5図) 何と先手は▲6八銀から8筋明け渡しの手順に出ました。5図は後手はほぼ無条件に8筋突破できて後手が早くも優勢です。 先手の手順が不可解でしたが、感想戦で全てがわかりました。 先手は持ち駒に角銀歩とあると錯覚していて、△8六歩の瞬間に▲4六角と打って馬が逃げた時に▲8二歩~▲7一銀の筋で良くなると思って銀を引いたのでした。 Yさんが錯覚に気づいたのは▲5七銀と上がる時で、ここでは既に先手が困っています。 しばらく進んで6図は後手が数分の少考で△4四銀としたところ。既に後手が優勢ですが、持ち時間は先手が残り20分程度なのに対して後手は残り15分を切っていたので、先手としては時間の有利さはある状況です。 実戦はここで▲8四金としましたが、▲5四歩とする手もありました。△同飛は飛交換となって陣形の差があるので後手が危険。なので△5四同歩ですが、以下▲7三銀△6三飛▲5四飛△5三歩▲7四飛(参考1図)。 参考1図でも先手の7三銀、8三金が重い格好なので後手がいいですが、とりあえず先手の飛が成り込める可能性が高いので楽しみはあります。 6図からさらに進んで7図。ずっと後手がリードしていましたが、7図は少しもつれているのではないかと感じながら見ていました。理由はとりあえず先手が▲金桂△角の2枚換えで駒得している点、後手玉が5三の地点で不安定な点、後手の打った中段の銀2枚の働きがイマイチな点でしょうか。またこの段階で先手の持ち時間は残り15分弱、後手は既に10分を切っていました。 実際ソフトの評価値を見るとこの局面で初めて(戦いが始まってから)先手がリードします。 上記の理由から観戦中はこの局面で何かあると思いながらどうするのかよくわかりませんでした。しかしソフトはわかりやすい手を推奨してくれました。 7図から▲5七歩△4五銀▲6七銀△3六飛▲3七金左(参考2図) 7図で▲5七歩とすれば△4五銀と引くよりなく、▲6七銀から飛を取りに行きます。 参考2図は飛を入手すれば▲6一飛や▲5一飛が結構痛く、後手玉は入玉できるとは限らないので大変です。 後手はとにかく飛に弱い陣形なのがつらいところ。こういう筋があるので中段で飛の退路を無くしている銀打ちは良くなかったのです。 つまり7図は先手にとってチャンスの局面だったわけです。 しかし実戦は7図から▲5七銀と打ったので銀交換から△7六飛で後手がひとまずピンチ回避の格好となります。 少し進んで8図。感想戦でも検討された局面です。 ここで▲4五銀と打つ手がありました。△同銀とは取れませんし、馬が逃げるのは▲5四飛。また△同馬は▲同金で後手玉が危険です。 後手としては▲4五銀に対して△5五歩と打つか、△5六歩(または△5七歩~△5六歩の連打)▲同飛△6五銀打とかして受ければ▲4四銀と王手で取れるのが大きい。 △4九角や△4九銀のような反撃手段があるのでこの順で先手が良くなるというわけではないですが、▲4五銀と勝負する手はありそうでした。 実戦は▲5五歩。以下△6五銀に▲5四銀と打ちましたが△4二玉と逃げたのがうまく、▲6五銀と銀を取れても攻め駒が一瞬後手玉から遠ざかるのが大きい。 これ以降は局面は後手がリードを広げる展開。しかし最後の方は持ち時間の残りが後手の方は1分前後で時間切れの心配がありましたが(先手は3~4分残っていた)、先手が自玉の詰み筋をうっかりして後手の勝利となりました。Yさんとしては最後自玉の詰み筋に気づいて延命策をとっているとどうなっていたかわからないところでした。 Oさんはこれでシニア静岡県代表となりました。ぜひ全国大会でも活躍してきて欲しいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.02.14 06:04:10
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