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カテゴリ:エコサイクル
昨年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件後、中国が輸出制限などの外交カードに使おうとした希少金属「レアアース」。最先端技術を駆使したさまざまな製品に使われ、ハイテク立国を掲げる日本に不可欠な金属だ。
しかし、「レアメタル」との混同など、一般的な理解はまだ低い。レアアースはどんなもので、将来に向けて安定確保していくには何が必要なのか。専門家に聞いた。 ◇ 各種産業にはさまざまな金属が使われており、国ごとの生産・消費事情に基づき、重要な位置づけの金属がレアメタルに指定されている。 埋蔵量で決まるわけではない。日本では経済産業省が、二次電池に使われるリチウムや液晶の電極になるインジウムなど47元素を定義している。 このうちランタノイド系列の15元素に、スカンジウム、イットリウムを加えた17元素がレアアース(希土類)だ。ハイテク素材に少量添加するだけで性能が飛躍的に向上するため「産業のビタミン」とも呼ばれる。 代表的な利用例は、鉄やホウ素にネオジムとジスプロシウムを加えて作る「ネオジム磁石」。永久磁石として最も強力で、急成長が見込まれる電気自動車のモーターや、コンピューターのハードディスクに欠かせない。 ほかにも燃料電池や蛍光材、超電導素材、原子炉の制御棒など、レアアースの用途は幅広い。 世界産出量の97%を中国が占め、世界消費の24%を占める日本は、輸入量の92%を中国に依存している。 政府は安定確保に向け、特定国依存解消や備蓄、代替材開発、リサイクルに取り組んでいる。東京大生産技術研究所の岡部徹教授は「リサイクルは特に重要だ」と話す。 中国では、レアアースを含む特殊な鉱床に硫酸アンモニウムなどの強酸溶液を注入してレアアースを溶出させて取り出し、深刻な土壌汚染や土壌流出を引き起こしている。 得られたレアアースは日本で大量に消費されるが、使用済み製品は大半が捨てられ、次々と新たに輸入されている。岡部教授は「これでは、地球環境は悪くなる一方だ」と強調する。 そこで、岡部教授は低環境負荷の「乾式回収法」を開発した。 強酸を使わず、粉末の塩化マグネシウムを約1千度で溶融した中に使用済みネオジム磁石を浸漬(しんせき)すると、ネオジムとジスプロシウムだけが分離し、12時間で磁石中の80%を回収できる。 ただ問題はコストで、現状では中国から新たに買うよりはるかに高いという。 しかし、岡部教授は「貴重な鉱床から環境に悪い方法で得たレアアースの使い捨てを続けてはいけない。リサイクルは絶対必要という環境意識を強めなければならない」と説く。 最近は、バクテリアを使ったレアアース回収方法を広島大の高橋嘉夫教授が開発し、注目を集めている。 レアアースを含む岩石や廃材を弱酸性の溶液に溶かし、その中にバチルス菌や大腸菌など、ありふれたバクテリアを入れると、表面にレアアースが吸着する。 高橋教授は、「バクテリアの表面にある細胞壁には無数のリン酸基があり、ここにレアアースが引き寄せられる仕組みだ。周囲に比べて、10万倍程度に濃縮される」と解説する。 レアアース吸着は、どんなバクテリアでも起きる。また、特に希少で高価格なツリウムとルテチウムをよく吸着する。 弱酸を使うため環境負荷は低く、バクテリアの培養は簡単で、コストは通常のレアアース精製の数十分の一ですむ。 高橋教授は、「吸着メカニズムを人工的に再現するシステムを作れば、低環境負荷・低コストなリサイクルの実用化が見えてくるだろう」と話している。 《産経新聞》 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年01月24日 09時37分10秒
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