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カテゴリ:エコサイクル
「狙って開発したわけではないのですが…」。グラファイトシートと呼ばれる柔らかくて熱を伝えやすい素材の開発に携わった西木直巳さんは笑う。
決してニーズ(需要)が先にあって開発されたわけではないこの技術が、新技術開発財団の表彰する昨年の市村産業賞功績賞を受賞した。 グラファイトとは、いわば炭素の塊。熱を伝えやすい銅に比べて3~4倍も熱伝導率が高いという性質がある。 グラファイトを手に持って氷に触れると手の熱が伝わり、みるみる氷の表面が溶けていく。また、金属と違って折り曲げられるため、簡単に加工できる。 こうした性質を生かし、携帯電話といった小型機器の放熱技術などに活用されている。熱をうまく逃すことで「機器の性能低下を防げる」(西木さん)というわけだ。 最初は分析機器などに使うことを目的に、固いブロック状のグラファイトを製造すべく研究と開発を重ねていた。 ところが二十数年前、製造工程で圧力をかける際のミスで、黒くて柔らかいシート状のグラファイトが「偶然にも」できた。 西木さんは「何かに使えるかもしれない」と直感する。ところが、用途がなかなか見つからない。軽くて強度が高いといった特徴を生かし高級スピーカーの振動板に採用されたこともあったが、コストが合わず長くは続かなかった。 研究チームの数が減り、上司からも「何をやっているんだ?」と言われることもあった。それでも素材開発をやめなかった。 すると10年ぐらい前から、ノートパソコンや携帯電話などで、放熱部品としての問い合わせが届くようになる。 一般的に素材開発は消費者のニーズが先にある。だが、グラファイトシートは逆に「技術のシーズ(種)が先にあった」。研究過程でちょっと“横道”にそれて開発された技術だが、「必ず必要になる」と信じたことで花開いた。 最近ではスマートフォン(高機能携帯電話)など携帯機器の性能が格段に上がった。いかに効率良く放熱できるかは今後も課題で、グラファイトシートの需要は高まっている。 将来的には放熱にとどまらず、「センサー技術にも応用できる」として、素材開発に取り組む考えだ。 ◇ 【プロフィル】西木直巳 にしき・なおみ 信州大大学院工学研究科修了。大阪大大学院工学博士。昭和58年松下電器産業(現パナソニック)。平成19年松下ソリューションテクノロジー(現パナソニックプロダクションテクノロジー)。グラファイトの開発に長く携わる。大阪府出身。 《産経新聞》 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年02月07日 16時40分35秒
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