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カテゴリ:エコサイクル
東京電力福島第1原発事故後、自然エネルギーに注目が集まるにつれて、生物由来の資源である「バイオマス」の関心も高まっている。そうした中、以前から間伐(かんばつ)材などの木質バイオマス産業の育成に取り組んでいるのが岡山県真庭(まにわ)市だ。
山林面積が市全域の8割を占める特色を生かし、官民が連携、木質バイオマスを活用した「地産地消・循環型社会」の実現を目指している。 ◇ 「真庭バイオマス集積基地」には、スギやヒノキの丸太を積んだトラックがひっきりなしにやってくる。 「市場で売れない細い木材や、製材所で余った端材や樹皮です」。 真庭市バイオマス政策課主任の小山隆さんによると、運び込まれているのは、伐採せず山林に残したままにするか、産業廃棄物として処理していた「使い道のない木材」だった。 市内にはもう一つ、「月田総合集積基地」があり、買い取られた木材は細かいチップにされて燃料として使われるほか、県内外の製紙会社に販売。こうした事業のアイデアはもともと、民間から出てきたという。 ◇ 県北部に位置する真庭市は平成17年、旧真庭郡勝山町や湯原町、川上村など9町村が合併して発足した。山林面積は約6万5千ヘクタール。人口は約5万人で、市民の3戸に1戸が山間部に土地を持つ。 さらに山から木を切り出す会社は約10社、製材所は約30社もあり、ヒノキは「美作桧(みまさかひのき)」のブランドで知られる。 旧真庭地域の製材所では、原木仕入れ量のうち約4割が樹皮や端材として処分されていたほか、輸入木材が増加した影響で山林にそのまま残される木材が問題化していた。 そこに着目したのが、真庭地域の製材所などの若手経営者でつくる「21世紀の真庭塾」。13年に地域の活性化を目指し、木材の廃棄物を活用して新産業を創出する「木質資源活用産業クラスター構想」を策定し、地域で活動を進めた。 一方、合併して発足した真庭市は18年、バイオマスの活用を推し進めるため、「バイオマス利活用計画」を発表。官民が参加した協議会を設置し、バイオマスに関わるさまざまな事業を検証してきた。 真庭バイオマス集積基地は、地元の真庭木材事業協同組合が建設。もう一つの月田総合集積基地は22年、真庭森林組合が整備。基地建設後、徐々にバイオマス活用の意識が地元に根づいてきたという。 ◇ 昨年完成した市庁舎は地元のヒノキ材をふんだんに使用。さらに月田総合集積基地で生産されたチップを冷暖房の燃料として利用している。ボイラー室には大量のチップが貯蔵され、森林組合がモニターで残量を確認し、燃料を継ぎ足す。 市庁舎のほか、チップは市内の製材所などでも燃料や発電に活用されている。全体の石油代替量は年間計約1万5千キロリットルで、1リットル75円と想定すると、約11億円分のエネルギーを自給したことになるという。 木材をエネルギーとして利用するだけでなく、付加価値を付けて新産業を生み出すことが今後の目標だ。 繊維を極限まで細くした新素材「ナノファイバー」を、木材から作る技術開発にも着手しており、市バイオマス政策課課長の宅見幸一さんは「事業性があり、業者側にメリットがあれば、木質バイオマスによる地域振興は続いていく」と期待している。 《産経新聞》 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年09月03日 19時19分22秒
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