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カテゴリ:愛toちはやふる
『ちはやふる plus きみがため』1巻 ちはやふるプラスきみがため (末次由紀先生、講談社、BE LOVE、2023年~以下続刊) 競技かるた漫画の金字塔『ちはやふる』待望の続編がスタート! 舞台は千早たちが卒業してすぐあとの瑞沢かるた部。 競技かるたで全国制覇を目指す一年生の長良凛月(ながら りつ)は 全国制覇をめざし部活に取り組んでいるが、なかなかうまくいかない。 それでも真摯に真剣に向き合う彼の姿勢は、周囲をそして自分自身の"心"を突き動かしていく…。 その強き意志は、誰がために――。 あらたな『ちはやふる』始動! 前作の『ちはやふる』は最終回後にハマったので、こちらはリアルタイムで追いかけることが出来て嬉しいです。簡単にですが感想をば! ◆漫画の天才の所行 (他の記事でも姉が散々褒め称えているので今更なんですが) …どうしても真っ先に叫びたくなってしまうのが、末次先生の「漫画の巧さ」。 テーマ性 構成力 脚本力 画力 演技力… シチュエーション カメラアングル デフォルメ力 テンポ キャラクター性 情報量 感情の焼き付き方。 漫画読書歴数十年の女の戯れ言ですが… ここまで全方位の漫画表現力に抜きんでていて キャラクターのバックボーンや生活感まで画面に落とし込んで 言葉にならない価値観・ニュアンス・激情をこんなに伝えてくる作家様はちょっと他に観たことがない!! というか。 青山剛昌先生・高橋留美子先生・森川ジョージ先生等々…レジェンド作家様たちからも支持される、圧倒的な漫画力! 好みかどうか云々…はさておき、漫画好きを名乗るなら必読書だよホント! と思っています。 ◆2人の男の子の物語 今回のお話は BE LOVE という女性誌掲載でありながら 凛月君&千隼君という2人の男の子が主人公に据えられています。 前作の 美少女1人+イケメン男子2人(白髪&黒髪) THE・三角関係恋愛モノ! とは明確に異なるパッケージです。 そもそも末次先生の作品は「ちはやふる」以前からほとんどが男女の恋物語(かなりメロドラマ寄り)という印象で、恋愛モノじゃない男の子主役なんてオムニバス形式の短編作品でしか描かれていないんじゃないかな… という位のラブストーリー作家様でした。 ただ前作「ちはやふる」においては、学生の団体戦~社会人達のかるた界が鮮やかに描かれる中で 高校生達の(特に)同性同士のリスペクト精神や友情、 社会人カルター達の、各々状況は違えど旧友たちが頑張っている姿に励まされている描写…等々 同年代・同性同士の関係性の描写がすごく光っている印象を受けたんですよね。 (そしてこれが本作が50巻の大長編になった理由のひとつだと思います) 多分… このあたりの「群像劇」に、末次先生自身もすごく手応えを感じられていて 今回は「ラブストーリー」ではなく「同年代の友情、そこから産まれる青春の物語」をメインに据えて描く事にされたのかな~、と感じました。 ※余談ですが… ウチのブログの ちはやふる感想でも切々と語っている部分なんですが やっぱり「恋愛」ってド真面目に描こうとすると、どうしても「人生」を念頭に置いて描かれるべき題材だと思うんです。 「この2人なら、生涯の伴侶として幸せに家庭を築いていけるだろう!」と感じさせる説得力が欲しくなるというか。 少なくとも BE LOVE で復帰されて以降の末次先生の作品群には、基本これ↑をすごく感じます。 やっぱり作者様自身も「恋愛=結婚=人生」の構図を強く意識するご年齢になっていたんだろうな、と。 そんな中で立ち上げられた「ちはやふる」も勿論例外ではなく… おそらく初期構想段階で据えていた「ヒーロー&ヒロインが名人&クイーンとして近江神宮で並んでハッピーエンド♥」なんて安直で綺麗すぎるロジックでは、到底長編物語を押し通す事が出来なかったのだろうな…と。 (そして「ヒロインがかるたに邁進する動機」をこねくり回して肉付けていくうちに、うっかり太一君の方との「依存と執着の最果て」みたいな恋愛感情が爆誕してしまい、手が付けられなくなっちゃったのかな、と) 千早ちゃん&太一君の恋愛模様は、もはや「青春ドラマ」に収まる次元のものではなく 後半はもう「ちゃんと描写はする!でもスポ根青春モノの本作の中でそれは説明しない!分かる人だけ分かってくれ!!」という描かれ方をしていたなぁ、と感じます。 末次先生が今回「2人の男の子」をメインに据えたのは、前作での反省を踏まえて 青春時代=高校3年間の物語 をしっかり描ききるためなのかな~ と、 現段階ではそんな印象を受けています。 よっぽど恋愛がしたい子じゃない限り、高校生活って 「同性の友達との関係」の方が俄然大切だったりしますよね! ◆「限られた時間の中で頑張るかるた」を描く群像劇 前作は「主人公がかるた界の頂点・クィーンを目指す物語」でした。 最初に登場する かるたの師匠は「バリバリ攻めがるた!名人・クィーンを目指すかるた!」を信条としている原田先生。そして千早ちゃんや新君も「初心者に対しても手加減なし!正々堂々勝負!」というタイプ… ーいや分かります。頂点を目指す子達を描こうとしたら、こうなるのも分かります。 …ただ!正直、私は読んでいて「ヤダよ こんな奴らと一緒にかるたするの」と感じていまして;; そもそも作中では「才能無いアピール」をしまくっていた太一君だって、12歳でかるたを始めて半年足らずでB級に昇格した、ただの超天才でしたし… ※小説版より 多分設定が甘くてつじつま合わせたらこうなったのかと 瑞沢かるた部の立ち上げメンバー達だって、バリバリ経験者3名+地頭が良くやる気のある初心者2名 という「高校選手権で全国優勝するための 選ばれし5レンジャー」だったんですよね。 基本的には「能力&部活に邁進出来る環境」に恵まれた、超有能キャラクター達の必然的なサクセスストーリー!という印象でした。 対して今回の続編は、「ヤングケアラー」「毒親持ち」という問題視すべきレベルの境遇におかれた男子高校生達が主人公。 ものすごく頑張らないと「自分の青春に費やす時間・環境」を勝ち取ることが出来ませんし、どうあがいても自分の意志を最優先できない場面に沢山ぶち当たります。 前作が連載開始したのは、2007年12月… それから16年後の2023年12月に連載開始となった、今回の続編。 見比べると、東日本大震災などを経て…だと思いますが 知らぬ間に「標準的な高校生像」や「ジェンダー観」が大きく変化していた事を凄く実感します。 また15年かけて「頂点を目指すかるた」「人生をかけるかるた」を熱く・美しく描ききった作者様が、今度はそのアンチテーゼ…でもないですが、「限られた時間の中で頑張るかるた」「楽しい想い出になるかるた」「豊かな人生の糧としてのかるた」もまた、美しく輝かしく描いてあげたくなったのかな、と。 数ヶ月頑張っても 決まり字を覚えることが出来ない初心者部員だって頑張ってるし、 抜きんでたかるたの才能はないけど、後輩からすごく慕われる先輩が存在感を持って大事に描かれています。 主人公・凛月くんのかるたの師匠として登場する 初心者やキッズ層に優しい&褒め上手な大山先生。 ここに現在の作者様の想いが込められているんだろうな~!と、すごく感じました。 ◆花野菫ちゃんと綾瀬千早ちゃん 今作は恋愛を主軸に置いていない!と前述しましたが、恋愛要素が無い訳ではありません。 凛月君が密かに想いを寄せるのが、3年生のかるた部キャプテン・花野菫ちゃん! 3年生になった菫ちゃん、恋する凛月君フィルターも入っているのかもですが…優しくて気が利いて、めちゃくちゃ可愛い憧れの君として描かれてます。 そんなに派手には描かれないんですが「思いついたらなりふり構わず即行動!自分にも厳しいし周囲にも厳しい事言っちゃう!」というタイプの凛月君に対して フワっと窘めたり冷静に他の道も考えるための言葉を与えたり、要所要所で 人の気持ちに敏感な菫ちゃんの良さが光っていると思います。 勝手な見解ですが… 菫ちゃんにとって、千早ちゃんって 「こうなりたかった女の子」なんじゃないかな と感じていまして。 お化粧なんかしなくても まつげバサバサで美しくて、大好きなかるたに熱意を持って取り組んで結果を出して… それでいて、実は恋愛に関しては超奥手&奥ゆかしさを持つ千早ちゃん。 彼女は 菫ちゃんが憧れる「理想のヒロイン」そのものというか… 「太一君にとって なんで千早ちゃんが特別なのか」一番理解出来るのは、実は菫ちゃんなんじゃないかな、と。 だからこそ余計に千早ちゃんと自分を比較して「私は性格悪い 才能も無い 誰も好きにならない」と思っちゃうんだろうな、と。 でも逆に、千早ちゃんは菫ちゃんみたいに「他人の機敏を感じ取り、瞬時に反応して立ち回る」とか「初心者に慕われる」とか、絶対出来ないですからね! 決定的に失恋が確定してから数ヶ月… まだまだ新しい恋に向かう気持ちにはなれないかもしれませんが、菫ちゃんには素敵な恋をして欲しいですね! ◆長良凛月君と真島太一大明神について 最後に… 主役の長良凛月君は、基本的には太一君を目指していくんだろうな~と(今の所)想像してます。 ・目標は「高校の団体戦 全国優勝!」 ・妹の名前は「りか」ちゃん ・めちゃくちゃ学習意欲が高い ・花野菫ちゃんに絶賛片想い中 こうした特徴から、やっぱり凛月君の目標というか 最終的な「倒すべき相手」は、太一君になるのかな、と。今後の展開としては、そんな期待をしちゃっています。 総合病院の家系に生まれ、親からのプレッシャーに応えながら超イケメンに成長し 運動神経抜群&京大医学部に現役合格する程に成績優秀&勉強家なスーパーハイスペッカー! さらに最強のリーダーシップ精神を有し、創部1年ちょっとで瑞沢高校かるた部を全国優勝に導き 競技者としても超A級、名人予選では東の代表(世界で3番手)にまで昇りつめた超努力家! それでいて気配り屋で優しいので、とにかくモテる。 女子からも勿論モテるけど、男子からも厚い支持を受けるとにかくモテる! ↑菫ちゃんに恋してしまった以上、凛月君は必然的にコレに挑まざるを得ないのではないかと… 難儀だな、と。 話が進む中で、ものすごく神々しく登場する太一君がまた見れるんじゃないかな~楽しみだな~!と今後の展開に対して、アレコレ期待が膨らみます! …簡単感想にしようと思ってましたが、結局長くなってしまいました; もう一人の主人公・千隼君に関しては、まだまだどんな競技者として描かれるのか未知数という印象… 今後どうなっていくのかな? 「きみがため」には辿り着くべき答えはあるのかな?? 久々にリアルタイムで追いかけたい漫画が出てきて、とても嬉しいです 次巻が待ち遠しいです! by妹 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.18 09:26:28
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