~ 指先から溢れる旋律 ~ 続き
「百合奈君は、もう教え子じゃない。ああなっては、ゴミ以下だ。」とんでもない捨て台詞に耳を疑った。「それって、どういうことですか!?その言いぐさもあんまりです!!」雛菊は声を荒上げて言うと小馬鹿にするように御門先生は笑う。「ふっ。才能のない者には興味がない。彼女もただの凡人でしかなかった。」次の瞬間、彼女は彼の頬を叩いていた。「......?!!」「ふ...ざけんじゃないわよー!!」倒れこんだ彼は、叩かれた頬を押さえながら彼女を睨み付ける。「貴方は、そのゴミ以下よ!百合奈のことはよく解らないし、だけど羨ましかった。誰かに認められる才能があって、両親にも可愛いがられて...」彼女はうつむき、涙を溢す「...貴方は人の痛みが解らないから、平気で傷付け、そのままでいられる。貴方の演奏は素晴らしい技術力があるかもしれないけど.....心に響かない......」彼はこれにはキレた「バカにするな!小娘ごときに何がわかる!!」すると起き上がり、彼女の胸ぐらを掴む。これには、ただ傍観するしかなかった友人も焦る。「止めてください!雛菊を放して下さい!」「えい、煩いー!」彼は空いていたもう片方の腕で友人を振り払った。 「...貴様に何が判る!!」「...苦しい...放して...」抵抗を試みるが、大人の男相手には、びくともしない「...大丈夫か?あんた、何してんだよ!放せ!」友人が振り払われるのを目撃した少年は、彼女に声を掛けた。そして、雛菊の存在を目にし、彼から掴んでいる胸ぐらから手を強引に離させ、やっと解放されて、地べたと放り出され、やっとのことで、息をしながら咳き込む。そこにまたもう一人、少年がやって来た。「何してんだよ?あれ、錦さんに、コーラス部の娘?どうしたんだ、大丈夫?!」この状況になり、追い込まれた彼は逃げ出した。少年が追い掛けようとしたが、二人のことが心配で止め、声を掛ける。「大丈夫か?あいつ、知り合いか?」彼は同じ学校で、同じクラスの速水君、もう一人は、速水君の友人で、松木君だった。「私は、大丈夫...雛は大丈夫?」友人は、そう言い、私の元に駆けつけ、私は、頷き、少年二人にことの行きさつを話すと、彼らは家の近くまで心配だからと言って、送ってくれた。 ーその夜東先生の帰りを待ち、今日遇ったことを黙っているわけにはいかず、打ち明けると「...馬鹿ー!!」ガツンと拳骨を受けた。あまりの痛さに声がでない。「もっと慎重になれよ!今日は偶々、速水や松木がいたから良いが、沢野もいたんだろう。沢野も打ち所が悪ければ、軽い怪我がじゃなく、死んでいたかもしれないだろう!」もはや、返す言葉が見つからない。「...ごめんなさい...」ショボくれた声で謝罪すると、彼は罰が悪そうに頭を掻きながら、頭を撫でこう言った。「分かってくれれば良い。次からは無茶するなよ。」“嗚呼、私はこの人や皆に護られているんだわ。反省しなくちゃ”改めて、大事にされていることを再確認し、そう心に刻み込んだ。