カテゴリ:小説
許しているつもりだった。
だけど、穂乃香の告白と謝罪の言葉が上手く、心の中に飲み込めず、胸の辺りがモヤモヤして、スッキリせず、沸々と怒りのようなものが込み上げていた。 「...ごめん、穂乃香。今日は、ここで帰るね!」 「...雛菊!」 彼女の声も聞かず、私は走り出していた。 このまま、いたら、もっと酷いことをいって傷付けていたかもしれない。醜い感情をぶつけるのが怖くて逃げた。 時間はいつしか過ぎ、肌寒さを感じる時間帯になった。私は屋上に薄着でいた。 忘れた筈の想いや元彼の楠田君との想いが頭の中を巡り、涙が勝手に溢れていた。 行き場のない怒り、悲しみをどう消化するかなんて分からない。 「...♪」 ピアノの旋律が鳴り響き、抑えていた感情が自然に涙になり溢れ出していた。 何時しか、私は泣き疲れ、眠ってしまった。 「...錦。また、泣いていたのか?」 誰かの声がした。そして、包むように何かが掛けられ、体が宙に浮くようにフワフワした感覚を憶え、また、深い眠りについた。 それは、いつになく優しい夢で、何故だか、心が温まる気がした。 「...錦。」 私の名を愛しそうに呼ぶ声、誰だか判らない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 3, 2009 04:51:48 PM
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