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全て | 日々の日記 | 小説
January 3, 2010
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カテゴリ:小説
「...そうだ、奈緒!せっかくヨリを戻しても、直哉さん、かなりグレていたから、邪魔されるんじゃない?」

私達は、直哉お兄様のことをすっかり忘れていた。

「そうかも...。」

絶対に邪魔される気がする。

「...お父様は、お兄様と、とても似ていらっしゃって格好良い。王子様みたい!」

奈緒子はすっかり、和宏様を気に入っている。

「ふふ。若い頃、あの方も“花も恋する貴公子”の名で、有名だったのよ!哲様の優しい笑顔に、乙女は鷲掴みで、人気だったの。貴女のお父様は、地方の娘達にとっては、正に手の届かない王子様だった。舞をやる時の美しさに心を奪われ、そして、氷のように冷たいけど、そこが良いって評判だったわ。」

「哲様とお父様、モテモテ!」

「若様に、なっちゃんをあっさり連れて行かれたからな...。見る目はあるのに、彼に対して、怒りたいことは山ほどあるんだよね!」

哲兄様も色々、怒っているみたいだった。

「...そういえば、和宏様は、何をお話になられているのでしょう?」

「いずれにしても、穏便に済むと思えませんわ。」

「...二人は、囲碁をやっているんじゃないでしょうか?」

樹さんはそう答えた。

「囲碁?何故、囲碁なの?」


突っ込むと

「将棋や囲碁を逢うとお手合わせする仲なんですよ。今回の件もそんな感じでしょう。」

樹さんの解答に、二人を咎めたくなった。

「...しょうがない方々ね。そうだ、あちらのお母様は何て?」

お義姉様も呆れていた。

「...孫を連れて、戻ってらっしゃいって...」

私も夢だと思うほど、信じがたかった。

「...何かの陰謀かしら?実は、手紙がすり替えられているとか...」

お義姉様もゾッとしていた。

「いくらなんでも、考え過ぎですよ!表向き、厳格な女性であり、姑であり、妻や母でなくてはならない為に、咲様は心を殺し、自ら、憎まれ役を買っております。大旦那様は、大らかな分、優し過ぎる為、色々と付け込まれやすいんです!だから、厳しくなさっているんですよ!まあ、若干、嫉妬も交じってますけど...」

薫さんはそう説明する。思い返せば、美雪様がいらした日は、特に機嫌が悪いと思う。

「それに、他の親族から二度と奈緒様が嫌な思いをさせられたり、悪く言われないように、監視を厳しくし、睨みを利かせてますから!和宏様は、本当に想ってもらっしゃいます。奈緒様を失うのを怖がっていましたしね。」

「お父様は、お母様が大好きなんだね!」



奈緒子は、嬉しそう。

「そうですよ!お嬢様。お嬢様のことも目に入れても痛くないくらい、大好きだと思いますわ。戻って来たら、たくさん、お話、なさると良いでしょう。」

薫さんから呼び慣れね呼び方をされ、奈緒子は、恥ずかしそうだった。





 ー夜

北条家の当主様が来たと言うことで、皆、舞い上がっていた。

和宏様が皆の前で、夕食時に舞を披露した。奈緒子は、初めて見る舞に、目を奪われ、見とれていた。

私も久々に拝見し、忘れていた感情がジワジワと溢れだしていた。

“早く、旦那様と二人になりたい...”

暫く、接吻すらすることがなかった、何十年ぶりかの接吻の余韻が体中にまだ残っていた。早く、二人になりたくて、ソワソワしていた。

相変わらず、色っぽいだけじゃなく、艶っぽい、舞が益々、体の熱を上げていく。

「...おい、奈緒!酒のお代わり!」

直哉兄様は、まだイジケていた。イジケて大量のお酒を飲んでいた。

「飲み過ぎよ!そんなに飲んだら、兄様の体に毒よ!」

注意を促すが

「だって、奈緒が悪いんだもん!実の兄よりそんなに旦那が良いのか?嬉しそうな顔しやがって、だいたい奈緒はな......」

直哉兄様の説教が始まる。




私は、イヤになった。お酒を多量摂取し、しかも機嫌が悪い上に、嫉妬だから、余計に質悪く、絡んでくるのだ。こうなると、今夜は奈緒子達には行けないと確信がつける。

「...だいたい、ちょっと顔が良いだけだろう?お前の兄で俺に対して、態度がデカくないか?」

とことん絡むお兄様に、溜め息もつきたくなる程、ウンザリしていた。





 宴が終わった後も延々とお説教が続く。ここまで来ると、説教と言うよりも僻みや嫉妬が絡んでいる気がする。

「...もう、兄様!遅いんだから、寝ましょう。私、湯たんぽにお湯を入れてきますわ!」

半ば、強引に部屋を後にした。

「もう、兄様たら!!」

いい加減、参ってしまった。そう言いながら、溜め息をついた。

台所まで、湯たんぽを持って歩いて行った。




 廊下の曲がり角で、後ろから誰かに、口を塞がれ、門に引き吊られた。

「?!」

「...ごめん、奈緒。」

甘い声が響き、手が外された。

「和宏様?!どうなさったんですか?奈緒子と一緒じゃ...」

その答えを聞く前に、唇を塞がれた。唇に柔らかい物が触れていた。彼が口付けていた。拒むことを許さないというごとく、何度も角度を変え、唇を貪っていく。



「...奈緒?」

「兄様?!」

マズいと思った。

「こんばんわ。」

「君も一緒だったのか?あれ、奈緒それは?」

私は、本来の目的を忘れていた。

「あっ!直哉兄様に湯たんぽを持って行こうとして...」

「奈緒、ごめん。直哉、やたら絡んで大変だっただろう?せっかく、和宏様がいらしているのに...」

「大丈夫ですわ。」

「これに湯を入れてくれば良いのか?」

「はい。あっ、兄様行けません。当主である兄様にやって貰うなんて...」

「良いんだよ!それに、まだ、紗々が台所にいるから迎えに行くついでだ。だから、二人でもう、ゆっくりして、構わないよ。」

兄様に気を使わせてしまった。

「...じゃあ、お願いします。お休みなさい!」

「すみません。それでは、お先に...」

私達は、兄様と分かれた。兄様は、去り際に和宏様に何か言ったようだ。

「...妹を宜しく。泣かせないように...」

「...極力気を付けます。」

二人で内緒話をしていた。





 兄様と分かれて、暫くして、改めて、今の状況を思い返せば、胸が高鳴り、緊張していた。まるで、新婚の頃のようだ。

「...奈緒」

「はい?!何でしょう?」

声が上擦ってしまった。すると和宏様は吹き出し笑う。



「ぷ。奈緒は、面白いな。そんなに緊張しなくたて、とって食う訳じゃあるまいし」

「笑わないで下さい!和宏様は、スマした顔で余裕なんでしょうが、私はいっぱいいっぱいなのに...」

膨れ面で、怒り、呟くと

「余裕なんてないさ。君のいない日々は、雲に隠れた月に想いを馳せるようなものさ...。君はまるでかぐや姫のようだ...」

あまりに歯の浮くような台詞を言うので、恥ずかしくなった。

「...散々、君のもう一人のお兄様に邪魔されたから、尚更、君を独り占めしたくなったよ。」

甘い雰囲気を醸し出す和宏様の普段の言動から想像出来ない。だから、若干、不安に感じる。

“和宏様、何か悪い物でも口になさったのかしら?それとも、酔っていらっしゃるの?直哉兄様に妬いていらっしゃるの?”

色々、悶々と考え込んでしまった。

「...奈緒、大丈夫か?さっきからずっと黙り込んだままだが...」

「えっ?はい、大丈夫です!!和宏様が和秋さんみたいに、妙に優しくって、甘い言葉を仰るので、ちょっと心配になりまして...」

そう言うと、急に顔色が変わり、何か怒った様子。
そして、急に抱き上げ、ズカズカと歩き出した。
何が起こったのか、あまり理解出来ずにいた。



 連れて行かれた先は、寝室で、布団の上に下ろされ、和宏様が私の上で、怒った様子で見ている。

だいたいの状況化として、理解出来た。これから起こる行為を想像させる。恐らく、泣いても止めてくれない気がして、恐怖を感じていた。

「...あの、和宏様。これは、あの...」

「夫婦なんだから、構わないだろ?しかし、君も罪な女性(ひと)だよね?」

笑っているが、悪魔の微笑みと言った所か?嫌な予感がしていた。

初めて、この人に抱かれた時、強く、激しく、なかなか寝かせてくれない上に、執拗に攻められ、腰が痛くなった憶えがある。

普段見せない彼自身が内に秘めた熱いところを目の当たりにした記憶はある。だから、ちょっと怖い。

久々に彼に触れられるだけでも、緊張しているのに、乱暴に抱かれてしまうんじゃないかと不安に陥る。

「...何のことですか?」

目を泳がせて答えると、両腕を上に一つに纏め上げ、片手で押さえつけ、口付ける。

その口付けは、決して、優しいものではなかった。

無理やり、舌を口内に侵入させ、犯していく。

甘い声が漏れ、一旦離された。

「...誘ってるのか?」

「和宏様が、イケないんじゃないですか!」

泣きながら訴える。



「君は本当に...そんな風に泣かれると誘って風にしか取れない。」

「私は、和宏様に優しくされたいだけです。久々なのに...」

「優しくね?」

意地悪っぽく笑う。

「...和宏様は、意地悪です。」

拗ねると彼は、そっと口付けた。

「奈緒が可愛いからだ。篠山家の若君はまだ、君に惚の字のようで困る。奈緒は、俺のものだ。だから、もう遠慮なんかしない。誰にも、君を渡さない。」

「和宏様...」

情熱的で、驚かされる。愛しさが増し、彼の首に腕をまとわりつかせ、今度は私から口付けた。

「...和宏様しか、見えません。私は、和宏様の...」

全部、言い切る前に唇を塞がれ、そのまま、甘い夜を過ごす。






 ーIN 北条家

伯母様を残し、帰ってきた私達(椿)は、恐る恐る玄関に入るとやっぱり、般若の仮面を被ったかのように怖い御婆様が待っていた。

「ただいま、母様。桃達もいるよ!」

笑顔の和秋伯父様。

「そう。じゃあ、藤と遊んでて頂戴。」

少し苛ついた声だった。

和秋伯父様は、藤を連れ、奥の部屋に連れて行かれた。

私達は、広い座敷の部屋へ移動することになった。

あまりの怖さに、頭痛がし、気持ち悪くなっていた。多分、顔色も悪い。



 部屋に着いてから、一言も喋らない御婆様。その緊迫の雰囲気に圧倒され、気持ち悪さが増していた。

「...咲さん。わしが悪かった。和久や椿は悪くない。だから、解放してくれないかの?」

お爺様の言葉も無視し、お茶を飲む御婆様。相当、機嫌が悪いようだ。

「咲さん。」

「和久、椿。当分の間、学校以外の退出を禁じます!和久。お前のことだから、稽古をサボっていたのでしょ?この私が作った予定をこなしてもらいます。椿。貴女は、今まで通り、花嫁修業よ!明日から、新しい先生が来るから今日は、これだけ、やりなさい。」

私達に渡された予定表は、結構、酷な気がした。和久様は、反発しようとするので、止め、稽古へと出向いた。

「...桃。貴女も一緒に椿と花嫁修業し直しなさい!あちらで、迷惑を掛けたのでしょうから?司は、旦那様と一緒に稽古。で、私はこれから実家に行って参りますので、くれぐれもサボらないようにお願いしますね。」

有無も言わさず、御婆様は言い付け、ささっと行ってしまった。





 「相変わらずなのね!私達、関係ないのに!」

母は、一方的な御婆様の態度に腹を立てていた。

「あのさ、桃。話が...「台所に行ってくる。」

無視した。





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Last updated  January 8, 2010 09:55:50 AM
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