いい星つくろう

2020/04/19(日)17:26

歴史は不可逆的に進行する

 パンデミックを引き起こしたCOVID-19の感染力は、転写する回数を増やすと勝手に弱まり、次第に毒性を弱める。この報告に基づけば概ね四人目以降の感染で、無毒化するということになる。この数値は平均で3.5であるとされていて、日本では2、5という数値がそこに適用されている。 この度のパンデミックを惹起したコロナウィルスは、感染率の自然増に伴って、危険度を次第に下げてゆく特徴を示している。RNAを介した転写プロセスの数次にわたる関与を経て、DNAコードに何らかの影響を及ぼし、転写エラーによるミスプリントを発生させ、それが弱毒化を誘発して自然に終息へと向かわせる、という経過観察の報告は参考するに値する。コロナウィルスが変異し易い性質をもつ、という特徴のあることについても適用でき腑に落ちる。   14世紀に発生したペストが時の経過と共に、いつしかすっかり消えてなくなっていた、という過去の事実が残されていることから、放置しておくだけで転写ミスを惹き起し、変異で毒性を失ってしまうことがあるらしい。転写を繰り返すと遺伝情報は変化し、その性質を変えていったということが、感染拡大を反転させて終息へと向かわせたという訳だ。違和感をそれほど抱かせない、という点から見てもこの観察報告は優れている。   別の可能性として考えられるのは、毒性の強さがウィルス自らに自家中毒を引き起こす、ということである。薬もワクチンもなかった時代にウィルスが自然消滅した記録がある以上、そこには何らかの未知の作用が関わっている筈だ。生物の概念から逸脱しているDNAコードの独立した切れっ端、に過ぎないこのウィルスは単独で自己充足することができず、それ故に宿主となる生物に寄生することでしか、生き残りを図ることができない。増殖する機会が与えられていなければ、宿主の死は己の増殖余地の否定とはならず、自家中毒が生命体の繁殖を抑制するのと同様に、宿主の死がウィルスの増殖率を引き下げる、という理解をそこで同時に成り立たせている。   治療する方法がまったく知られていなかった、14世紀のルネッサンス前期の時代でありながら、ナノサイズの遺伝子コードのもつ毒性は、一定期間を閲したのちに、勝手に終息していたということになる。同一のウィルス株が転写を繰り返していくうちに、いつしか毒性が次第に弱まるというサイクルが繰り返される。その過程で獲得した免疫能力が遺伝因子となって蓄えられ、その他疾病に対する抵抗力となって働くようになっている。免疫機能には遺伝的な要素である獲得免疫と、感染に対応して起動する自然免疫の二種類のものがある。生存を許された固体のもつ遺伝因子が後代の生命に受け継がれ、高かった当初の感染致死率を最終的に引き下げるよう機能する。   今回の感染爆発では、地球規模化していた市場経済システム全体が急停止することとなり、力強く成長を続けてきた国際経済は突然活動を停止した。市場システム自らが経済を縮退させる方向へと反転し、過去に類例のない変化をコード上に刷り込んだ。ウィルスの感染拡大が止まったことを確認すれば、消費市場は活性を取り戻し生産性は確実に向上する。負の効果が消えてなくなったとき、循環系は自動的に反転して復活する。そこで必要となるのが、消費を実行するための資金的支援。給付金の支給回数または金額を増やすことによってのみ、消費市場の活性化が実現できる。これを怠れば、経済成長に正の循環は戻ってこない。インフレ目標を達成するためには、潤沢な資金供給が要するに必要なのだ。シニョレッジを活用する機会は、その段階で顕在化するだろう。   流動性の密度上昇を実現するだけのことで、停滞していたデフレ志向の経済は反転してインフレを実現させる。金利の上昇を避けたインフレなど、あり得ないことなのだ。アベノミクスの失敗の根源は、ここにある。国債発行という方法を続けている限り、金利負担に財政は圧迫され続ける。やるべきことは国債の増発ということではなく、発行紙幣の印刷強化という方法の実施励行にある。共産党政府が中国を短期間で世界第二位の債権保有国へと押し上げたのは、人民元を制限なく発行し続けるよう唆した、ドル安政策の実施であるに他ならない。中国を世界の生産基地にするという幟を高く掲げて、世界中からドルを集約して中国大陸へと蝟集させた。このドルに過剰流動性という属性を賦与していた過去のすべてが、世界市場からドルを回収して中国大陸へと上陸させるよう機能した。   ドルの供給権を保有するアメリカは、為替市場を通じて外貨交換を間接的に行っている。直接取引を行っている国際金融資本は、ドルを仲介する役割を担っている。世界市場で起きているドル余り現象は、ドルを基軸とする経済体制が、長年に亘って生み出してきたもの。産油国がドルという便利な通貨での決済を指定している以上、あらゆる石油消費国はドルを調達して、石油の代金を決済しなければならない。そのためには自国通貨を売って、ドルを買っておかなければならない。ドルを配給する役割を果たしているのが、国際金融資本と呼ばれているかつてのドル資本。その一郭がリーマンショックで崩壊し、世界規模の金融危機を2008年10月に発生させた。   これによってドル経済圏は、与信能力を短期間だったが失った。過剰流動性の仕向け先を北米大陸で失った世界中のドル通貨の運用者たちは、この時アメリカのアドバイスを容れて、中国大陸を目指して一斉に移動を開始した。ここでドル売り圧力が急激に高まってドル安となり、人民元の通貨価値は大きく上がったが、固定相場での運用手法を持ち込んでいた共産党政府が、ドルの通貨価値を高める目的で人民元の発行量を急増させた。その時代の三年間で、中国を金満国家へと一気呵成に押し上げた。通貨発行権(シニョレッジ)を活用してドルの価値を高めたことが、共産党政府にドル建ての資産を積みあげることとなり、ミリタリーバランスを崩したことをアメリカが悟るまで、共産党政府はアメリカが与えた漁夫の利を得て、08年に失いかけた信用経済システムを、G20の創設に関わって復活させた。   現在はドルの中国大陸への流入が減っているため、同じ手を使うことができなくなり、専ら外貨準備を取り崩すことで共産党体制を維持している。外貨準備はドル高を誘導する目的で買ったドル建ての公債の総額であり、これを債権市場で売却すると外貨準備は低下して、アメリカの長期金利の水準を高くする。人民元を制限なく発行し続けてきたということが、共産党員の懐具合を豊かにし、世界中で爆買いと呼ばれる一斉行動を発生させたことは指摘するまでもないだろう。人民元を大量に発行し続けていながら、中国全土でインフレが起きたという報告は一切なかった。安定した経済成長を着実に辿り続けている。シニョレッジを乱用していながらも、懸念されていたインフレという経済事案は認められていないのだ。既存のエコノミスト一同がプラットフォームを取り違えていなければ、健全な経済成長を維持することなど、疾っくの昔にできていたのである。ずいぶんと回り道をしたものだ。   中国が人民元を市場に大量供給していながらも、インフレはまったく生じていなかった。シニョレッジを正当に活用したというだけのことで、経済的な体質強化を実現できる、という絶好の見本となっている事実を忘れてはならない。この部分を完全に見失っていた正統派経済学者たちが、間違ったプラットフォームの上に、グロ-バル市場主経済体制を成り立たせ、ついに行き詰らせてデフレ経済を定着させた、ということになる実に不毛な話だったのである。   余りにも衒学的で教条主義的だった経済学者たちのその姿勢が、一連の不毛な経過と結果とを同時に導いた、正統派経済学者一同が一見完全に見えるサイクルだと思い込み、複式簿記であるバランスシート型市場経済システムを、ナノサイズのコロナウィルスがそこに加わったときを境に、合成の誤謬を一瞬で成立させたという経緯が記録へと残された。経済メカニズムの唐突な停止は、こうした歴史的な背景があって、いままさに引き起こされたばかりの、出来立てほやほやな話なのである。損失を起債で賄うという方法は、問題を解決することにどう見ても結びつかない。それ以外のもっとよい別の方法がない、ということでは決してないからである。  

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