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今回は、紙ベースの四季報に書かれている「現金同等物」の盲点について考えたいと思います。
キャッシュフロー計算書が定義する「現金同等物」がどういった範囲であるのかを踏まえた上で、それを考えていきます。 以下は「連結キャッシュ・フロー計算書作成基準」における「資金の範囲」に関する記述です。 ************************** 一 資金の範囲 連結キャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、現金及び現金同等物とする。 1.現金とは、手許現金及び要求払預金をいう。(注1) 2.現金同等物とは、容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資をいう。(注2) (注1)要求払預金について 要求払預金には、例えば、当座預金、普通預金、通知預金が含まれる。 (注2)現金同等物について 現金同等物には、例えば、取得日から満期日又は償還日までの期間が3か月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が含まれる。 ************************** 「連結キャッシュ・フロー計算書作成基準」は皆様も一度ご確認しておいたほうがよいと思います。(キーワード検索で引っ掛かります。) その中の一部である「資金の範囲」についてです。小難しい名称の金融商品が列挙されているのですが、確認しておくべき重要な事項は、「キャッシュフロー計算書が定義する資金とは『手元にある現金』と『3ヶ月以内に確実に流動化できる価格変動が殆どない金融商品』に限定されている」ということです。 したがって、例えば「3ヶ月以上の定期預金」などはここに含まれておらず、通常は「投資のキャッシュフロー」の項目として「定期預金の預け入れ」とか「定期預金の引き出し」という形で表記されます。 もちろん、「貸借対照表」には「現金預金」という形式で表記されています。(流動資産の「1年基準」によるもの。) そして「キャッシュフロー計算書」には「注記」として以下のような形式で記載されています。 *20××年○○月△△日 ・現金及び預金勘定:100億円 ・うち預入期間が3か月を超える定期預金など:80億円 ・現金及び現金同等物:20億円 すなわち、上記の事例だと、貸借対照表には「現金及び預金」の項目には100億円が記載されているのですが、「キャッシュフロー計算書」が定義する「現金同等物」は20億円だけなのです。 そして、四季報に掲載されている「現金同等物」は20億円です。そうすると、キャッシュリッチな企業を四季報で見る際に、「実質的なキャッシュが他にたくさんあるにも関わらず、それを見過ごしてしまう可能性がある」という問題が生じます。 もちろん、「CD-ROM版の四季報」や「有価証券報告書」で「現金及び預金」の項目を確認すればすぐに分かるのですが、紙ベースの四季報ではそれが確認できません。 あと、こうした「3ヶ月以上の定期預金」のほかにも、リスク度が極めて低く換金も容易な公社債投信などが「有価証券」の項目に掲載されていたり、貸倒リスクが極めて低い「貸付金」などが固定資産の「投資等」の項目にあったりします。 紙ベースの四季報で見落とした企業に実はキャッシュリッチな企業が存在したりすることもあり、資産バリュー派としては結構油断ならない存在です。 今は、そうした「見落としお宝企業」を発掘中で有望な候補をいくつか見つけていて目下調査中です。(ちなみに、富士変速機もそうでした。) 今日の言葉: 「会計原則は企業の経済的実質を測定する方法に関する一つの意見にすぎない。会計原則の盲点に隠れたお宝(もしくは爆弾)が存在する可能性があることを見落としてはならない。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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