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前回は、「企業会計の目的と機能」について説明しました。今回は、「企業会計の理論構造と目的指向性」についてです。
************************ <企業会計の理論構造と目的志向性> 企業会計の目的が十分に達成されるためには、それが一般に認められた原則に基づいていなければなりません。そのためには、いくつかの基本的前提が社会的に広く認められた仮定として存在しなければなりません。 その「企業会計の理論構造」ですが、一番の土台となるのが「会計公準」です。これは社会に広く認められた仮定として会計が行われるための基本的前提を示しています。 この「会計公準」という土台の上に「会計原則」または「会計基準」が存在し、企業会計の具体的な行為規範を示しています。さらに、その上に「会計手続」が存在し、具体的な処理手続を示すという構造をとっています。 すなわち、以下のようなピラミッド構造をしていることになります。 (上部構造) 「会計手続」――企業会計における具体的な会計処理 (中部構造) 「会計原則」または「会計基準」――企業会計の具体的な行為規範 (下部構造) 「会計公準」――企業会計の基本的な枠組み 「会計公準」にはどのようなものがあるのか? 「会計原則」または「会計基準」にはどのようなものがあるのか? 「会計手続」にはどのようなものがあるのか? については、次回以降の日記で必要に応じて示していきたいと思います。 さて、下部構造である「会計公準」、中部構造である「会計原則または会計公準」、上部構造である「会計手続」というのは、単に三段重ねのピラミッド構造になっているのではありません。これらは、ある一定の方向に向かって積み上げられています。それが「企業会計の目的」に他なりません。 すなわち、企業会計というのはある特定の目的に向かって理論構築されている「目的指向性」があるものだと解釈できます。この「企業会計の目的」は利害関係者の要請により変化します。 例えば、債権者保護を目的とする商法会計と投資家保護を目的とする証取法会計では、それぞれ異なった理論構造となるということです。 ************************ 実例がないと分かりにくいかと思いますので、ここでは「減価償却」という概念を例に考えます。 日商簿記の資格取得のために勉強をして減価償却の概念を知った人、あるいは、決算書の入門書で減価償却の概念を知った人は、減価償却の方法として「定額法」や「定率法」などを学んだはずです。 そして「資産の減価とは、定額法や定率法を基にして計算するものである」ということを暗黙の前提として学びますが、これとて本来は「本当にそれでいいのか?」を考えなければならない疑問となります。 「会計の理論構造」によると、減価償却における定額法や定率法は、上部構造に当たる「会計手続」に他なりません。それを支える中部構造である「会計原則」または「会計基準」、そして下部構造の「会計公準」はどうなっているのでしょうか? まず、中部構造である「会計原則」または「会計基準」ですが、資産の取得原価は資産の種類に応じて各事業年度に費用として配分しなければならないという、「費用配分の原則」に基づいていることになります。 さらに、下部構造である「会計公準」ですが、企業は解散や倒産などの事態を予定することなく、事業を継続的に行っていくという「継続企業の公準」に基づいているということになります。 こう考えると、減価償却ひとつをとっても、さまざまな問題が発生します。 *資産の減価額の計算において、定額法や定率法を使うことの妥当性 *資産を費用配分するという考え方の妥当性 *事業の継続性という仮定の妥当性 減価償却に限らず、会計の理論的構造に立てばこうした疑問がたくさん出てきます。それを突き詰めると会計学者同士が行っている議論というところにまで行き着くのでしょうけど、私自身がまだまだそんなレベルに達していないということで、今日はこのへんでやめておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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