高知競馬には、橋口さんがおるきね
夜さ恋ナイターの1日は、昼下がりの「モー展」で幕を開ける。モー展(モーニング展望。の略)は2部構成で、前半はジョッキーが、後半にはトラックマンが出演し、橋口浩二アナウンサーと軽やかにトークを繰り広げる。 モー展。通信初めてモー展を見たとき、ぶったまげました。レースを控えたジョッキーが競馬中継に生出演し、その日の騎乗馬についてコメントしてくれるだなんて。モー展の「ジョッキーズトーク」のような斬新な企画(といっても10年以上前からやってると思います)は、高知競馬の魅力のひとつです。橋口さんがいるからこそ、できることだと思います。「モーニング展望。」の司会:橋口浩二締め切り音楽の作曲:橋口浩二協賛レースの演出:橋口浩二ファンファーレの作曲:橋口浩二公式ハロンタイムの計測:橋口浩二レース実況:橋口浩二橋口さんは1994年から、高知競馬の実況を担当しています。ハイセイコーとオグリキャップしか知らなかったという橋口さんに競馬実況をオファーした人は、すごいと思う。今風にいうと神。出走馬がゲート裏で息を整えているとき、橋口さんは実況席からいろんな話をする。その馬の生産牧場、血統背景などを、わかりやすく伝える。協賛者のメッセージを優しい声で伝えて、素敵なコメントを添える。橋口さんの言葉には、競馬を見つめる真摯であたたかいまなざしが、にじみあふれている。伝えるって、こういうことなんだな。と、私はいつも思います。高知のホースマンは皆、橋口さんの実況が大好きです。「こないだ、牧場の人が実況を聴いてこじゃんと喜んじょった」「高知の実況は、日本一やないろうか?」「そらそうよえ。橋口さんは日本一やきね!」橋口さんは高知競馬になくてはならない語り部であり、高知のホースマンの誇りです。「橋口さんは競馬のことを本当に考えてくれていますし、アナウンサーっていう立場だけじゃなくて、高知競馬の一員という感じですね」(赤岡修次騎手)バレンタインデーの「一発逆転ファイナルレース」で、ミシシッピデルタという牡6歳の芦毛馬が、勝利を挙げました。「先頭は8番のミシッシッピデルタです。これがデビューから84戦目、初勝利となってゴールイン!」ほ~。84戦目の初勝利か~。「ミシシッピデルタ、初勝利にたどり着きました。長い長い道のりでした――」この実況がとても印象的で、私は橋口さんに「ミシシッピデルタ、よかったですね」と言いました。すると橋口さんは、こう答えました。「ミシシッピデルタって、すごく可愛い顔をしているんですよ」ハッとしました。橋口さんの実況に込められた「見てるよ」という想いに、触れた気がしました。先日、松木啓助厩舎のミシシッピデルタを訪ねました。た、たしかに。か、かわいい。10年ほど前のことです。橋口さんに「最も思い出深い黒船賞」を訊ねると、「やはり第1回の黒船賞ですね」という答えが返ってきました。 第1回黒船賞「鞍上の北野真弘が残り50m手前でガッツポーズしたんですけど、僕はなんだか北野とふたりでセッションしているような気持ちになっていました。あとで実況を聞き返すと、いつもの僕の実況と違っていましたね」今年も高知競馬場で、黒船賞が行われる。橋口さんの実況を聴ける。この幸せを、しみじみと噛みしめる。3月15日の黒船賞まで、あと9日!