昨年の笠松グランプリを制したラブバレット&山本聡哉騎手。
GI2着馬・サトノタイガーを、力でねじ伏せました。
岩手の馬が他地区の重賞を勝つのは、9年ぶりの快挙でした。
2012年に厩舎を開業した菅原勲調教師が牧場をまわり、初めて自分で選んだ馬。それがラブバレットです。
菅原調教師は言います。
「これほど大復活する馬は、なかなかいないと思います」
ラブバレット 牡5歳 岩手・菅原勲厩舎
2歳時から重賞戦線で活躍してきたラブバレットですが、3歳春から成績が下降。夏には膝を骨折し、休養を余儀なくされてしまいます。
北海道・浦河のヒダカファームで患部を癒したラブバレットは、明け4歳の冬を福島県のテンコー・トレーニングセンターですごしました。
そして馬体重を30kg以上増やし、ムキムキマッチョに成長して、岩手へ帰って来たんです。
災い転じて福となす。休養中に成長期を迎えたのでしょう。誰もが「別の馬みたい」と感じるほどに変身したラブバレットは、浦和のさきたま杯で4着、盛岡のクラスターカップで3着をもぎとり、笠松グランプリを制覇。地方競馬屈指のスプリンターに成長しました。
そして明け5歳、水沢のトウケイニセイ記念を快勝。1月半ば、再びテンコーへ向かいました。
2月のはじめ、雪景色のテンコーを訪ねると、黒船賞に向けて調教に励むラブバレットと山本聡哉騎手の姿がありました。
テンコー・トレーニングセンターは、豊かな自然に囲まれた調教施設。
ウォーキングマシンでじっくり体を温めたラブバレットは、聡哉騎手を背に、起伏に富んだ逍遥馬道をせっせと歩いて体をほぐします。そしてフラットコースでダグを踏み――全長950mの坂路コースを駆け上がりました。
この日の坂路調教は2本。日によっては3本走ることも。
坂路を200mほど歩いてみました。ふわふわクッションが効いていて、脚元に優しそう。ハアハア。これは運動不足によって生じた息切れではない。私は今、猛烈に興奮している。地方競馬マニアにとって、「テンコーの坂路」は聖地と言っても過言ではない。
この坂路で、メイセイオペラが鍛えられたのかあああああ@&ぢ#bだうぎぇkr%wぴjrぃ!!!!!
坂路調教の効果でしょうか、トウケイニセイ記念の時よりもたくましくなったような気がします。
お尻もムキムキにビルドアップされたような気がします。ねえ聡哉騎手、いまテンコーにいる馬の中で、ラブバレットのお尻が一番立派なのでは……?
「僕もそう思うんですよ。坂路調教は後肢の筋力のトレーニングになりますし、全身を使うので、体幹も鍛えられる。逍遥馬道は起伏があり、歩いてるだけでも体がほぐれて、トレーニングにもなります。ラブバレットはすごくリラックスしていますし、体調もよくて、順調に乗り込んでいます」
テンコーの休憩室には、岩手の雄・メイセイオペラの写真が飾られています。菅原調教師が騎手時代に主戦を務め、南部杯や帝王賞、フェブラリーステークスなどを制したメイセイオペラは、テンコーの坂路調教で成長しました。そして今、菅原調教師が管理するラブバレットも、テンコーの坂路効果で復活&成長。
しかもメイセイオペラの好敵手だったアブクマポーロも、ラブバレットが笠松グランプリで接戦を演じたサトノタイガーも、テンコーの坂路で鍛えられた馬です。これって宿命だべ?
昨年の岩手リーディング・山本聡哉騎手。テンコーでは、ラブバレットの調教だけでなく、手入れも聡哉騎手が担当していました。
「ずっと接しているうちに、しぐさや性格がわかってくる。僕としては、すごく楽しいです。とにかく『黒船賞でいい競馬をしたい』っていう気持ちが、とても強い。いい結果を出すためには過程が大事だと思うので、しっかり馬とコミュニケーションをとりながら、レース本番に向けてやっていこうと思っています」
聡哉騎手はここ数年、岩手競馬の冬休みを利用して、テンコーで研修にいそしんでいます。
だからラブバレットと聡哉騎手が同時期にテンコーで過ごすのは偶然なのですが、「トレセンで主戦ジョッキーがつきっきりで調教をつけ、手入れまで担当する」というのは、極めて異例。そもそも聡哉騎手は、「テンコーで岩手の馬に乗るのは、ラブバレットが初めて」なんだそうです。
「『全国で通用するような馬がいたら、こういう施設で調教してみたいな』と感じていましたが、こんなに早く現実になるとは思っていませんでした」
それって運命だべじゃ。
テンコーの馬房の裏は、サンシャインパドックになっています。
みんな気持ちよさそうに日向ぼっこ。素晴らしい環境ですね。
ラブバレットは、2月下旬に水沢の菅原厩舎へ帰厩しました。
「ひとまわり大きくなって帰ってきた。去年テンコーから帰って来たときもいいと思ったけど、今年はさらに成長を感じます。精神的にも落ち着いているし、順調ですね。いい状態で、高知に向かえると思います」と菅原調教師。
左から、内山一郎オーナー、山本聡哉騎手、菅原勲調教師。岩手競馬アワード2015の表彰式にて。ラブバレットは「特別賞」を受賞しました。
暮れの兵庫ゴールドトロフィーを挫石で出走取消した無念を乗り越えて。ラブバレットの強さを、岩手競馬復活をアピールしたい。熱い想いを背負って、岩手が誇るスプリンターが、はるばる高知にやってきます。
「黒船賞馬は黒船賞馬から」という、有名な格言があります。うそです。いまこしらえました。なぜならラブバレットのお父さんは、2001年と2003年に黒船賞を制したノボジャックだから☆
3月15日の黒船賞まで、あと6日!